第10話:覚醒の初期段階
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気持ち駆け足で、昨日のあの場所へ向かう。
正直、二度と行きたくない場所だけど…そうも言ってられない。
兎に角、早く鞄を見つけて、早く学校へ行こう。
『どこかな…どのへんに…』
到着した森の茂みを、奈由は隈なく探した。
今のうちに来て正解だった。
森の茂みには、太陽の陽射しが差し込んでパッと明るい。
昨日のような、不気味な雰囲気は感じない。
『えっとぉぉ…あ、あっったー!』
丁度、昨日奈由が
身を潜めていた辺りから、鞄が出てきた。
昨日の妖怪が暴れたからだろう。
鞄は、草木と土埃を被って汚れている。
『中身は大丈夫かな…』
汚れを手で叩き落とし、鞄を開け中身をチェックする。
…良かった。何も取られていない。
『あぁぁぁ~~…よかったぁ。本当焦ったよぉ…』
不安感からやっと解放された
奈由は鞄を抱えて、その場にしゃがみ込んだ。
『ああ…でもこうしちゃいられない!早くここから出ないと…!』
ゾクッッ
ー緊張が解れたのも束の間。
気の緩んだ身体を、立て直して
その場から去ろうとした瞬間だった。
背筋から、冷たく緊迫した空気が流れているのを感じる。
この感じを奈由は、既に一度体感したことがある。
あの妖怪の…妖気だ!
奈由は、恐る恐ると自分の背後へ、振り向いた。
何もない。
きっと、この視線の先…もう少し奥の方からか。
このまま逃げ出すが良し…
だが、妖怪の妖気だけではない。
この先から、微かに人間の声が聴こえてきた。
絞り出すような、震えた声が。
奈由は身体を後ろに振り返らせ、奥の方へと歩み寄る。
恐る恐ると。
できるだけ…音を立てずに。
『…っ!!』
そ、そんな、まさか…!?
歩んだ先には、鬼に変身したあの妖怪がいた。
だが、それだけではなく…幼い人間の少年まで一緒にいる。
「う、あ…ぁ…あ…たすけ...ぁ...」
腰を抜かした少年は涙を目一杯に溜め、恐怖で震えている。
森に入り込んだ少年と妖怪が
偶然、居合わせしてしまったのだろう。
このままでは、まずい…。
あの妖怪は昨日…
子供の魂を食べると言っていた。
あの子の、魂も食べられてしまう!!