第33話:師弟の物語
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「悲しむことはない」
絶望に嘆く師匠に、覆面が言葉を掛けた。
「ど…どういうことだ?」
「…………あれを、見な」
覆面は、ソッとリング上を指差す。
そこには、既に息絶えたはずの、円、梁、魁が、ゆっくりと起き上がろうとする姿があった。
「円…梁…魁…まさか…生きていたのか…!」
「……し…師匠?」
円達は直ぐには状況が把握できず、暫く師匠をボーッと見つめた。だが次第にジワジワと状況を飲み込めるようになり…戸惑ったように、顔を俯かせた。
「申し訳ありません…師匠」
「な、何を言う。お前達はよくやってくれたではないか。謝るのは私の方…」
「それは違います!僕達は…っ…この手で償いきれない過ちを犯しました…」
自分の意志に無関係とはいえ、この手で幾つもの命を殺めた。
武道家の風上にもおけぬ、あまりにも、罪深い過ちを。
「師匠に合わす顔などございません。いっそ…いっそのこと、このまま死んでしまった方が…」
「っ…この馬鹿者が!!」
弟子の口から、聞きたくない言葉だった。
久方ぶりに師匠から一喝され、弟子達は思わず背筋を伸ばした。
「滅多なこと言うもんじゃないよ」
すると、割って入るように、覆面が口を開いた。
「さっきの技はな、霊光波動拳、五大拳のひとつだ。自分自身の罪の裁きを心に問い、肉体に科す荒技なのさ。つまり、心が汚れていれば肉体は滅び、逆に澄んでいれば、肉体の悪い部分が浄化される」
「それは…つまり…」
「お前達は、打ち勝ったのさ。肉体を奪われようとも、真摯に武道を極め研鑽された強い心で。そして、何よりも師匠を助けたい一途な想いで。だから今こうして、アンタ達は生きている。生かされたその生命……けして無駄にしたらいけないよ」
覆面の言葉で、心のつっかえが解けていく。
いいのか、こんな自分達でも?
―――俺達は…生きていて…いいのか。
『師匠さん…立ち上がれます?』
「あ…ああ」
奈由は、師匠の手を取り、再び身体を起こした。
『…お弟子さんのところへ、行ってあげてください。あんなに大きな声を出せるんだもん。もう、歩けますよ』
「……有難う」
師匠は、覚束ない足で弟子のもとへと、少しづつ歩んだ。
「師匠………っ師匠!!」
次第に、弟子達も駆け出し、師匠を抱きとめた。