第33話:師弟の物語
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「なっ…なんじゃこれは!どうなっとる!?これじゃワシの計画が全て台無しじゃないか!」
計算と計画が狂い、半狂乱になるイチガキ。
倒れ伏した3人からは、跡形もなく霊気が消え失せている。
もう、10カウントせずとも起き上がることは叶わない。
そして
「……9…10!浦飯チームの勝利です!よって、2回戦進出は浦飯チームに決定致しました!」
レフェリーの判定により、浦飯チームの勝利がここに決まった。
だが、そんな判定をよそに、苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる幽助には、この勝利を手放しに喜ぶことはできなかった。
「納得いかねーぜ!こんなムカツク勝ちは、もうゴメンだ!何より…イチガキ…てめぇは絶対に許さねぇ!!」
「ひっ…!」
幽助、蔵馬、飛影にギョロリと睨まれて、狼狽えるイチガキは、ついに逃げ場を失ったと判断してか、惨めなほどに懇願した。
「た、頼む!見逃してくれ!それに、アレだぞ!?ワシを殺せば、奴等の師匠も死ぬ!居場所も病気の解毒剤の作り方も、ワシしか知らん!殺さず生かしておいた方が得というもんじゃろう!?」
「…それは、どうかな」
単調な口ぶりで言う蔵馬は、一方向を指で指して合図した。
イチガキが、その方へ恐る恐る視線を移すと、そこに居たのは、病に倒れたはずの恩師。そして、恩師に肩を貸す奈由の姿があった。
『アナタの助手が、教えてくれた。この方を幽閉していた場所まで…全てね』
「彼の病は、奈由が薬草を作り、すぐに解毒してくれました。体力は落ちているが、すぐ回復しますよ」
「うぐ……っ!こんなはずじゃ…こんなっ…はずがぁあぁ!!」
全ての計画がなし崩しとなり、自暴自棄となったイチガキは、ポケットの中から一本の注射薬を取り出した。
それを自分に打ち付けようと、大きく振り翳すが…
「おらぁっっ!!」
悲鳴さえ上げる間もなく、イチガキは幽助の手により、観客席まで吹っ飛ばされた。
「……自殺を図ろうしたのか、何なのか知らねぇが、てめぇはコナゴナになって、反省してな」
怒涛の一撃に、場内が一気に静まり返った。
ついに、イチガキチームとの戦いは終わった。
大きな、大きな遺恨を残して。
「くそっ…」
『師匠さん…!大丈夫ですか…!』
崩れ落ちるように、しゃがみこんだ師匠は、こあまりにも悲惨すぎる結末に、打ちひしがれた。
「円…梁…魁…っ…私は…彼らにどう詫びればいい…っ…!何故…私だけが…おめおめと生き残ってしまったのだ…っ…」
『師匠さ……』
円。梁。魁。
それが、3人の尊き弟子達の名。
恩師を治したい一心で
並々ならぬ覚悟で、その身を捧げた弟子達。
師匠は、目から大粒の涙を溢し、悲しみに暮れた。