第33話:師弟の物語
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
『そして…っ…その恩師の病でさえ、イチガキの仕組んだ罠だったってこと!全ては3人を実験道具とするために…!』
血も涙もない。
あまりに残酷な真相に、心が痛み、騒ぐ。
許されざるイチガキの悪業に、奈由は、堪えきれず涙を溢した。
「っぐ…そ…ういうことかよ…」
横たわったままの桑原が、蹌踉めきつつ、身体を起こそうしたのを見て、奈由は咄嗟にリングに登り、桑原の身体を支えた。
『桑原君…!大丈夫!?』
「ああ…でも、これで全てハッキリと分かったぜ。今朝、俺の夢に出てきたんだ。こいつら3人がお師匠さんの為に実験台にされるところを…!全部…正夢だったてことかよ!!答えろ!イチガキィ!!」
桑原君の怒りが、伝わってくる。
奈由は、強く桑原の背中を擦った。
「…だったら、どうだというんだね?」
『なっ…』
「君達にとって、今一番大切なことは目の前の敵を倒すことじゃろう?うちのチームの身の上を、君達が心配する必要などない。さぁ、存分に戦い合うが良い!」
本当の悪人というのものは、想像以上に、心が凍てついているようだ。
イチガキは、眉一つ動かさない。
むしろ、笑ってさえいるのだ。
その姿に、返す言葉さえ失ってしまう。
だが、しかし
ここで、思いもよらぬ人物が
口を開いた。
「幽助、桑原、奈由」
『えっ…』
「1度、リングを降りな。ここは、アタシがカタを付ける」
声を聞いたのは初めてかもしれない。
浦飯チームで、一番の謎に包まれたチームメイト。
通称、覆面選手。
この選手が男なのか女なのか、年齢も職業も分からない。
だが、今初めて聞いた覆面選手の声から、少しだけ謎が紐解かれた気がする。
若い女性だ。
とはいえ若さ特有の、ハツラツさというものは感じられず、随分と落ち着いている。
だけど、その雰囲気から…只者ではないことだけは伺い知れた。
「聞こえなかったのかい?全員、リングを降りな。特に、奈由。アンタは選手じゃないだろ。リングに上がる資格はないよ」
『え……あっ!ご、ごめんなさい!すぐ降ります!桑原君、幽助君もっ…!!』
覆面の一言に、奈由は飛び上がり、慌てて桑原と幽助と共に、リングを降りた。