第33話:師弟の物語
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「わかっ…た!言う!言うから!ドクターイチガキは…究極の生物兵器の開発を目論んでいるんだ……!この大会の出場メンバー達も…元々は人間だった奴等で……兵器に改造した…っ…ドクターイチガキの手によって…」
「なっ…!」
悍ましい話に、奈由は、すぐに内容が飲み込めなかったが、少しの間を開けてから、冷静なトーンで口を開いた。
『……改造された人達は、自ら望んで兵器になったの?』
「いや…そのっ…」
しどろもどろに言葉を渋る男は、奈由から視線を逸らし、目を泳がせる。
だが、奈由はしゃがみこむ男の目線まで腰を下ろして、言った。
『ちゃんと、私の目を見て!』
「…っ」
『もう…全部、話してください。詳しいことは分からないし、アナタにも立場があると思うけど、でも……生きてる人を兵器にするなんて、こんなに残酷なことないよ。心も身体も丸ごと壊されるってことでしょ?それはもしかしたら…死ぬよりずっと…ずっと辛いことかもしれない』
「奈由……」
真摯に訴える奈由を、背中越しに見つめる秀一。
目の前の妖怪に物おじせずに語りかける姿には、正直なところ呆気に取られた。
この妖怪に限らず、妖怪には非人道的な思考のヤツが多い。
いやむしろ、そういう妖怪の方が圧倒的だ。
だか、どんなであれ妖怪であれ、心を尽くそうとする奈由に…
―――…秀一は、大きく心を揺さぶられた。
「確かに…そう。残酷なことだ。泣きたい時に泣けない。笑いたい時に笑えない。怒りたい時に怒れない。それはまるで機械同然さ。命令のままアイツらは戦ってる。アンタの言うとおり、それは死ぬより辛いこと…かもしれんな」
完全に勢いを失った男は、奈由の訴えかけに心動かされたのか、少し考えを巡らせた後、力強い目で奈由を見つめた。
「話す。これまでのこと……全てを」
「良いぞー!!追い詰めろー!!殺せー!」
むせ返るほどの熱気に包まれた会場の中心で、その試合は行われていた。
Dr.イチガキvs浦飯チームによる戦いは、お互いに譲らぬ攻防を繰り広げている。