第32話:ベスト8を前にして
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「…ふん」
顔を背ける飛影だが、腫れ上がった腕だけは奈由に、しっかりと預けている。
奈由はそんな飛影に応えるように、両手で優しく包み込みながら、ソッと腕に触れた。
―だが、その刹那。
「待て」
『え?わわっ!』
飛影は素早い動きで、奈由の腕を掴むと、勢い良く身体を持ち上げた。
意図せず無理に身体を起こされて、おもわずフラつく奈由だが、すぐさま秀一が肩を抱いた。
「奈由。出来るだけ後ろに下がって。…飛影の治療は、また後で」
囁き言う秀一の声に、奈由はハッとし、正面に目を向けた。
飛影君の治療に集中しようとしていたから…全然気付かなかった。
――妖怪の気配が迫ってくる。
それも、私達に対して確かな殺意を持って…近づいてきている。
「さ、早く」
『っ…うん…』
奈由は、秀一の言う通り、後ずさりながら少し離れた場所へと移動した。
そして、深い森の茂みから、2人の妖怪が姿を現した。
「さっきの馬鹿でかい笛の音に釣られてやってきたのか……それとも俺達を足止めするつもりか」
「おそらく…後者でしょうね」
ただ静かに、何も言葉を発することなく、異様な空気だけを纏った妖怪が一歩と一歩と近づいてくる。
飛影と蔵馬は、2人の妖怪に向き合い、剣と鞭を静かに携えた。
『秀一君っ…飛影君……』
対Dr.イチガキ戦がまもなく始まろうとする矢先に、突如現れた妖怪。
ここで足止めさせようという魂胆なのかもしれないが
いずれにせよ、ここでやられるわけにはいかない。
「行くぞ、蔵馬」
「…ああ」
戦いの火蓋は切って落とされた。
奈由は、祈り見守る。
ーー今はただ、見守ることしかできないから。
〜続く〜