第32話:ベスト8を前にして
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
『これ、普通の人間には聞こえない音波を発する笛なんだって。吹く人の霊力や妖力が強いと、遠くにいる妖怪にまで音が届くみたいなの。今の私だと、そんなに遠くには届けられないかもしれないけど…運が良ければ、飛影くんが気付いて、邪眼で確認してくれるかも!』
「それだと他の妖怪にも届いてしまいますが…なるほど。確かに、やってみる価値はあるかもしれませんね」
『よし!早速やってみよう!何かすっごい音がするみたいだから…気を付けてね』
奈由は、口元に笛を構えた。
どの程度の音が出るのか分からない。
でも、覚悟を決めて吹こう。
わずかな望みに賭けて!
『……すぅっ』
ピーーーーーーーーーーー!!!!
今にも鼓膜を突き破りそうな、高音。
音の波動で、木々が大きく揺らめき、鳥達も激しく騒ぎだす。
「っ…すごい音だな…!」
『ぷはっ…うぅぅ〜耳痛ぁぁっっい!』
吹いた張本人もかなりのダメージを受けてクラクラとしているが、心の中で必死に飛影に呼びかけた。
ーーお願い、飛影君!気づいたら返事して!
「うおぉっ!」
ドサッ
背後から何かが落下したような鈍い音。
そして、鈍く唸った声が聞こえた。
くるりと後ろを振り向いた奈由と秀一は、背後に広がった光景に目を大きく見開いた。
「いっ…なんだ…今の馬鹿でかい音は…」
『ひ…飛影君!』
これを奇跡と呼ばずに何と呼ぶ。
想像以上に近くにいた飛影は、まるでカブトムシのごとく木の上から落下してきた。
『飛影君、良かった!大丈夫?立てる?』
奈由は、おもわず駆け寄り手を差し伸べたが、飛影に手を振り払われた。
「助けなどいらん」
『……心配したんだよ、ずっと。本当は怪我してるんでしょ?』
「なんの事を言っているのか知らんが、キサマに心配される筋合いはない」
相変わらずのつっけんどんな態度を見せながら、奈由を冷たく突っぱねる。
しかし、そこに間髪入れず秀一が口を挟んだ。
「飛影…右腕を見せてください」
「……必要ない。蔵馬、さっさとその女を連れてどこかへ消えろ。邪魔だ」
「早急に手当てをした方が良い。このままだと、貴方の右腕は」
「二度も同じことを言わせるな。消えろ。俺の腕がどうなろうと、キサマの知ったことではない」