第31話:蔵馬の戦い
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
抱き寄せていた腕を緩めて、奈由の頬に手を添えた。
戸惑いながらも下を俯く奈由だが、暫く考え込んだのちに、ゆっくりと口を開いた。
『……怖…いよ。見たことなかったもん、あんな秀一君』
「うん…」
『でも…試合を観る前から、きっと秀一君は、蔵馬として戦うんだろうなぁって…漠然と想像はしてたから。そこまでショックではなかったよ。その姿を目の当たりにするって……何となく覚悟してた』
だけど
ひとつだけ
大きな不安が残った。
『戦わないで…秀一君』
「奈由…?」
『死を覚悟してまで、戦わないで』
命懸けの戦いだってことは、分かっている。
分かっている、だけど!
だからといって
〝死んでしまっても構わない〟と思って、戦わないで。
『死にそうになったら逃げて。降参してでも命だけは守ってほしい。絶対に死なないで』
「っ……」
『今日の戦いを見て分かったもん。秀一君は、死さえ厭わないんだって。でもそれだけダメだよ。絶対に。秀一君が…死んじゃったら…私…』
想像しただけで、耐えられない。
あなたのいない〝人生〟なんて。
「奈由…」
『約束して、生きるって。絶対に死なないって!生きて一緒に…帰ろう』
奈由は、蔵馬の首に腕を回し、強く抱きしめた。
泣かないように我慢していたけれど、それも限界で、自然と涙が溢れてくる。
「………約束する。奈由。君をおいて…死んだりはしない」
『まだ…いっぱい知りたいことあるの。秀一君のこと、蔵馬のことも。絶対に…生きてよ…』
「俺も同じだよ。まだ知りたいことが沢山ある。君のことを。必ず…一緒に帰ろう」
そうして2人は、再び
慈しように
温かな抱擁と約束を交わした。
鳥の囀る森の中で
2人だけの、大切な大切な
ーーーー誓いを立てたのだった。
〜続く〜