第31話:蔵馬の戦い
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「そうか…」
頬に翳す奈由の手から、温かな妖気を感じる。
頬からジンワリと浸透して、身体の中が癒やされていくのを感じる。
『…ごめんなさい』
「え?」
『私が大会に来るの…嫌だったでしょ。私がいると戦いずらい…よね』
今日の一戦を見て、改めて思った。
この大会は〝南野秀一〟としてではなく
〝蔵馬〟として挑まなければ、絶対に勝てないということ。
呂屠が命乞いをしようとも、耳を貸すことなくトドメを指した姿は…残酷だった。
だけど、その姿を見て
この大会は、慈悲深さを持っていては戦えないと、私は理解した。
優しさを見せれば、つけ込まれる。
殺されることだってあると思う。
この大会では、南野秀一としての〝優しさ〟や〝人間力〟は邪魔になる。
『秀一君は、優しい。だからきっと、残酷にならざるを得ない戦いは……私に見せたくなかっただろうなぁって思ったんだ』
「……」
『でも、私大丈夫だよ?秀一君としてではなく、蔵馬としてじゃないと、この大会は勝てないってこと。だからね…私のことは気にしないでおもいっきり戦ってほしいの』
「………奈由…っ…」
『わぁっ』
堪えていた衝動が抑えきれず
秀一は、奈由を抱き寄せた。
『秀…』
「っ……」
徐々に腕の力も強くなっていく。
激しく抱き寄せられ、奈由は終始ドキドキと胸を高鳴らせる。
そうして徐々に、奈由もまた秀一の背中に手を回した。
「貴女は…俺に気を使いすぎだし、謝りすぎですよ」
『そう…か…?』
「もっと我儘で良い。嫌なことは嫌と言ってくれれば良いし、もっと胸の内を聞かせて欲しい。あまりに聞き分けが良すぎて…ちゃんと本心なのか心配になります」
それが、秀一の本音だった。
いつだって全てを肯定してくれる奈由に心地よさを感じつつも、それが果たして本心なのかと不安になる。
無理をしているんじゃないかと。
「今日の俺の姿を見て…怖くなかったですか?」
『それは…っ…』
「俺は、奈由がどう思ったかを聞きたい。知りたいんだ、君のことを。奈由のことを」