第31話:蔵馬の戦い
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
『……っ…』
ーーどうして
こんな酷いことが起きてるの。
『秀…一君…』
秀一君が、こんなにも一方的な暴行を繰り返されているのに、何もできない無力さ。
そんな思いとは裏腹に、最高潮の湧き上がりを見せる観客達。
私はただ一人、目の前で繰り広げられるこの無惨な光景に、打ちひしがれた。
「奈由ちゃん…」
動揺を隠せず、不安げに試合を見つめる私の手をぼたんちゃんが強く握りしめた。
「大丈夫だよ…!蔵馬は、きっと負けない!きっと何か事情があって、抵抗しないだけさ!どこかで巻き返すさ!」
私もそう思う。そう思いたい。
何か訳があるはずなんだ。
秀一君はきっと、タイミングを見計らってるのかもしれない。反撃の。
でも、でもこのままずっと
こんな状況が続いてしまったら
秀一君は…
『っっ…ごめん!ぼたんちゃん!』
「え!?ちょちょちょっと奈由ちゃん!?」
奈由は席から立ち上がり、客席最前列の方まで駆け出した。
できるだけ1番近くで、できるだけ大きな声を届けたいと思ったから。
「いいぞー!いいぞー!呂屠!蔵馬なんか殺しちまえ!」
「そのままくたばれ!蔵馬〜!!」
盛大に飛び交う野次。
その全てが、蔵馬に対しての冷酷で、無慈悲な暴言ばかり。
味方のいないこの状況で、蔵馬の応援をするのは非常に危険。
だけど、奈由は
自分の声を届けずにはいられなかった。
『秀一君ーーー!!』
ーーーズパッッ!
『ぁ……っ…』
その瞬間、再び振り翳されたカマによって、蔵馬の頬から血が溢れた。
「なんだよ…その目は…」
ここまで好き放題に傷付けられてもなお、毅然とする蔵馬。
顔を歪めることも、声を荒げることもない。
そのうち、どんなに痛めつけても動じない蔵馬に対して、呂屠は苛立ちを感じ始めた。
「俺は機嫌を損ねたぜ。ほ〜ら、次は土下座して俺の靴を舐めな!早くしないとお前の母親は…」
「断る」
「……な…なに……?」
あまりにも端的な言葉が、蔵馬から返ってきたことに、呂屠は動揺し、目を泳がせた。
「もう良い。押せよ」
「へ…へへへへ…言ったな!?とうとう本性を現したな!?偽善者ぶっても…ちょっと揺さぶればこの通りじゃねぇか!どうせお前は…俺達と同じだ!」
「押せ」
「ああ…!ああ!押してやるよ!押してやるぜ!てめえもやはり妖怪だ!カッコつけんじゃねえ!」