第31話:蔵馬の戦い
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「次鋒…前へ!」
湧き上がる歓声の中、蔵馬が立ち上がった。
向かいから現れた相手チームの次鋒に視線を移すと、そこには不敵で不気味な顔をする妖怪の姿があった。
「蔵馬」
リングへ上がろうとした手前、飛影から呼び止められて、後ろを振り返る。
「ちょっと痛い目にあわせてやろうなんて、考えるなよ。二度と歯向かう気にならんようにしてやれ」
「ああ、分かってる」
飛影の忠告に軽く頷き、遂にリングへと上がる蔵馬。
近くで見ると、相手の卑しさがますます目につく。
「それでは次鋒!蔵馬VS呂屠!始め!」
リングアナの高らかな声を皮切りにスタートした試合だが、蔵馬も呂屠も直ぐに動こうとはせず、お互いを見つめて、様子を伺った。
「アンタ…人間と同居してるんだってなぁ。俺には信じられないね。やはり周りの人間を大事にするクチかい?」
「……」
不気味に笑いながら、挑発するかのように言う呂屠だが、蔵馬は一切表情を乱さず、一定の距離を保ちながら呂屠を見つめた。
「くくっ…随分と冷静だなぁ。きっとアンタが死ねば、周りの人間達も悲しむだろうねぇぇ?」
すると呂屠は、自身の右手の甲から鎌のような形状のモノを生やしてみせた。
「なるほど。カマイタチか…」
「余裕こいてると痛い目見るぜ!しゃあっっ!」
蔵馬目掛けて、ブンッと大きく音を鳴らしながら振り翳されたカマイタチ。
だが、蔵馬はいとも簡単に避けて見せる。
「くっ…このっ…」
ービュン! ービュン!
何度も何度も繰り返し、攻撃を仕掛けるが、一向に蔵馬には当たらない。
完全に見切られており、次第に周りの観客からも、呂屠に対してのブーイングが飛び交った。
「おいおい!何やってんだよ!まるで弱っちいじゃねぇか!」
「下がれ!下がれ!お前なんかじゃ蔵馬は倒せねぇよ!」
ブーイングの嵐が巻き起こる観客席。
そんな中、奈由は両手を握り締めながら、祈る想いで試合を見守った。
『秀一君…』
カマが、秀一君目掛けて振り翳されると、その度に胸が苦しくなる。
どうか当たらないで、当たらないで…と必死に願うばかり。
ーーそして、遂に蔵馬も動き出す。
相手の力量がそれほどでないことを確信すると、素早く呂屠の間合いに入り込んだ。
「大した使い手でもなさそうだ。今、楽にしてやるよ」