第29話:それぞれの想い
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
だが、そんな最中
蔵馬がある異変に気が付いた。
「…おかしい。カップが1つ足りない」
「んなっ…!?確かに、カップは5つあったはずだぜ!?何で4つしかねぇんだ!?」
目の前にあったはずのカップの消失。
前触れもなく突然消えたカップの行方に困惑していると、蔵馬達の後方から飲み物を啜る音が聴こえ、一同は大きく後ろを振り返った。
「なっ…誰だ!?いつの間に部屋の中に!?」
そこには、コーヒーを片手に持つ1人の少年の姿が。
全く面識はないが、少年の余裕な表情と、その身体に漲るオーラからして、大会の出場者だろうと、すぐに察しがついた。
「てめぇ…はじめっから部屋に隠れていやがったのか!?」
「隠れてたなんて人聞き悪いなぁ。オイラはちゃ~んとドアから入ったぜ!あ、ノックは忘れたかな?」
揶揄っているだけなのか、妙な落ち着きと剽軽さを見せてくる。
まるで毒気のない少年の姿は、逆に不気味に感じられて、蔵馬達の間に僅かな緊張が走った。
「そんなに緊張しなくたって良いよ。オイラは、鈴駒。明日の1回戦で君達と戦う六遊怪チームの特攻隊長さ!」
「六遊怪チーム…だと!?」
まさか、次の対戦相手だとは。
誰にも気付かれずに部屋へ侵入し、全員の眼をかいくぐって、コーヒーを盗む素早さ。
これだけ機敏な動きをやってのける者が対戦相手ともなると……明日の闘いは、早速困難を極めるのではないかと不安が募る。
「いやぁ~ゲストは良いよねぇ。退屈な開会式や説明会に出ないですぐに試合に出れるしさぁ!あ、そっか!どうせ皆死ぬんだから優勝した時の賞品の交渉なんか必要ないもんね!!アハハッ!」
挑発してくる鈴駒の姿は、まるでただの子供にしか見えない。
だが、本当に実力と自信があるからこそ、これだけの余裕さを見せられるのだろう。
蔵馬達は何も言い返さず、ただ鈴駒の様子を、そのまま見つめていた。
「でもな~…なんだかなぁ。前大会の優勝チームの大将がゲストに推薦したって聞いて期待してたのに……正直ガッカリだね。全員スキだらけっていうか、相手にもならないっていうか」
「喋りすぎだぞ、鈴駒」
聞き覚えのない、男の声。
蔵馬達は、声の聴こえた方へと振り向いた。
そこには壁に保たれ掛かりながら、こちらを見つめる1人の男の姿。
落ち着いた雰囲気の青年だが、彼もまた相当な使い手なのか、強い妖気を放っている。
「部屋の逆スミにもう1人…!?いや、こいつはいなかった!間違いなくいなかったぜ!!」