第27話:大切な君と君へ
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「ただいまー」
夕餉の準備を進めているであろうあの人に、秀一は柔和な声で呼び掛けた。
秀一の帰りに気が付いたその人は、パタパタとスリッパの音を鳴らし、玄関先まで姿を現した。
「秀一、おかえりなさい!まぁっ……奈由ちゃん…!」
『……志保利さん』
エプロン姿に身を包んだ秀一の母、志保利。
遂に、念願の再会を果たした志保利と奈由は…お互いの存在を、瞳に映しながら、感極まった表情を浮かべた。
「奈由ちゃん…いらっしゃい!ずっと待ってたのよ…」
『ううぅっ~、志保利さぁぁん!』
病床に臥した姿しか見たことのなかった奈由は、すっかり元気になった志保利の姿に、衝撃を受けつつも
ちゃんと完治できたのだとジワジワと実感し、玄関先にも関わらずポロポロと涙を零した。
『志保利さん…本当にっ…元気になって良かったですぅ…!うぅ…』
「奈由ちゃんったら…泣かないで?私まで泣けてきちゃうから…」
「ちょっ…2人共落ち着いて…」
突然、奈由が泣き出したかと思えば、母までエプロンで涙を拭い出して、秀一は少し慌てた様子で宥めた。
「ほら、母さんも…こんなところで泣かないでよ。まだ料理の準備してるんでしょ?」
「あっ…そうだったわね。ごめんなさいね、奈由ちゃん。さぁ、上がってちょうだい!」
『あっ…はい!お邪魔します』
奈由は涙を指で拭うと、気を取り直して玄関を上がった。
先導するように秀一が「どうぞ」と言って前を歩き、リビングへと招かれると、そこには、所狭しと並べられた美味しそうな料理が、テーブルの上を埋め尽くしていた。
『わぁ!?こ、こんなに用意してくださったんですか!?』
「ふふふっ、はりきりすぎちゃったかしら?あとはスープを温めるだけだから、少しだけ待っててね」
『何か、お手伝いすることあります?』
「良いのよ。奈由ちゃんは、お客様なんだから座っててね。秀一、飲み物だけ冷蔵庫から出してくれる?昨日買っておいたジュースが扉側に置いてあるから」
「ああ、あれね。他に出すものは?」
「それだけで大丈夫よ。有難う」
親子らしいやり取りに、おもわず聞き入った奈由だが、ここに来る途中で購入したケーキの存在を思い出し、手提げ袋を取り出した。