第26話:紡ぎあげる時
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「今日はこのまま…手を繋いでも良いでしょうか…?」
『…うん』
時々…私は…秀一君との距離感を見失う。
前世は、恋人。でも、今は違くて。
なら、友達?でも、それは寂しくて。
節度を持った関係を…と、自制心を働かせようとしても
手を繋ぎたくなったら
衝動的に、繋いでしまう。
抱きしめたいと思ったら
衝動的に、抱きしめてしまう。
関係性がしっかりと定まっていないのだから、弁えるべきだと
分かっているのに…
ーーーそれでも
「…さ、行きましょうか」
強く握り締めてくれた、秀一君の手を振り払うことが…私にはできない。
だって
秀一君のことが、大好きだから。
『えっと~…じゃあAランチを1つと』
「Bランチを1つ」
「かしこまりました。少々お待ち下さい」
駅から少し離れた民家にひっそりと佇む、隠れ家的カフェを訪れた2人は、このカフェおススメのランチを、それぞれ頼んだ。
店員が一礼して下がると、秀一はおしぼりで手を拭きながら、奈由に話し掛けた。
「オシャレなお店ですね」
『ね。ここもクラスの友達に教えてもらったんだ。凄く美味しいって!』
「そうなんですね。あ、奈由がこの前言ってたケーキ屋さんは、いつ行きます?このお店を出てから?」
『ううん、秀一君のお家に行く直前が良いかな。テイクアウトして、志保利さんへのお土産にしたいの!あ…でも志保利さん、好き嫌いとかあるかな?アレルギーとか。甘い物は苦手じゃない?』
同じくおしぼりで手を拭きながら、サラリと発した奈由の一言に、秀一はキョトンとした顔を見せた。
「……特に好き嫌いはないですけど…そんなに気を遣わなくて良いですよ?気持ちだけで十分…」
『別に気を遣ってるわけじゃなくて…私がそうしたいだけ。志保利さんと一緒に食べられたら嬉しいなぁ~って』
以前から…思っていたが
奈由の気遣いには、感心するものがある。
何気無い、心配り。
相手を不快にさせない言葉選び。
特に、自分よりも目上の人に対して、やたら気を配るに、細心の注意を払っているように感じる。
もしかすると
過去、行方不明になった友人の親から言われた心無い言葉等が…
良くも悪くも、奈由の性格を作り上げる要になった…のかもな。
「奈由は…何気ない心配りが得意ですね」
『そ、そう?』
「母さんに対してもそうですけど、幻海師範の寺で修行していた時だって、率先して家事をしてくれたり……目配り、気配りを感じる瞬間は沢山ありました。なかなか、自然と身につくものではないと思います」
『は…初めて…言われた。なんか…一生分褒められた気がする…』
思い掛けないお褒めの言葉に、奈由は嬉しさを隠しきれず、照れながら笑みを零した。