第25話:頬を伝う宝石
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
飛影はそう言い放つと
視線を、雪菜の方へと移した。
飛影に見つめられて、一瞬驚いた表情をみせた雪菜だが、自身もジッと見つめ返して、戸惑いつつも、礼を口にした。
「あ…有難うございました。あの…あなたは…一体?」
「………」
雪菜の問い掛けに、暫し、沈黙を貫く飛影。
どこか、少し困惑した様子にも見えたが、窓越しに映る、幽助と桑原の方を振り向き、呟くように言った。
「……仲間さ。ヤツらのな」
すると、飛影は突然に踵を返し、モニター室から出て行こうと方向転換させた。
相変わらずの冷静沈着な表情で、部屋から出て行こうとしたが
「…奈由」
『へ?』
扉の側で立ち尽くしていた奈由と擦れ違いざま、飛影が足を止めた。
そして、チラリと横目で奈由を見つめ…こう告げたのだ。
「むさ苦しい男連中ばかりで、どいつもこいつも役に立たんからな。雪菜のことを…………頼む」
ーー頼む
そう言い残し、飛影は、その場を後にした。
『……』
初めて…名前を呼ばれた驚きと
ドライだと感じていた、あの性格からは、とても想像つかなかった優しい言葉。
つっけんどんな口調ではあるが、雪菜に対する気遣いと、愛のある想いがあってこその言動だと、奈由は実感した。
『あぁ……だから、か…』
そういえば
飛影君が、今回の任務を伝えに来てくれた時に言っていた…あの言葉。
「次の任務には…行くんだろうな?」
「必ず、行け」
あの発言は、きっと
周りが男の子ばかりで、雪菜ちゃんが怖い思いをしないために…私を行かせたかったから…かな?
『…素直じゃないな、本当』
妹想いで優しい飛影に良い意味でギャップを感じ、おもわずにやけてしまった奈由だが、すぐさま、隅の方で立ち尽くしていた雪菜の傍に駆け寄った。
『雪菜ちゃん、大丈夫?』
「あ、は…はい。有難うございます。あの…アナタが、奈由さんですか?」
『うん。やっと会えたね』
奈由はそう言いながら、雪菜の手を握ると
『あっ…』
雪菜の身体が、小刻みに震えていた。
長い間、恐怖に晒されて生活をしてたんだ。
ずっと……怖かったよね。
『雪菜ちゃん…もう大丈夫だからね』
「えっ…」
奈由は、雪菜をギュッと抱きしめた。
もう大丈夫だよ、と
何もかもから解放されたのだと
そっと、優しく
彼女に、訴えかけるように。
『もう…全部、怖いことは終わったからね』
「……っ…はいっ……」
全てから解放された雪菜の瞳から、美しい宝石が零れ落ちた。
それはもう
誰のモノともならない
彼女だけの、美しい涙の宝石が。
~続く~