第24話:花はヒカリ
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「いや…でも、彼女にも色々予定があるかもしれないし…」
「じゃあ、聞くだけ聞いてみてくれない?入院中にお世話になったのに、全然会えていないし…あの時のお礼がしたいのよ、母さん」
無邪気に言う志保利の顔は、期待に満ちていた。
以前から…奈由に会いたいと、何度か言われていたけど…
まさか具体的に計画してくるとは思わなかった。
それだけ、会いたい…ということか。
「…分かった。じゃあ、聞くだけ…聞いてみるよ」
「まぁ!有難う!ふふふっ、楽しみだわ」
まだ決まった訳でもないのに、いつになく浮かれた様子を見せる母の姿に、秀一は、おもわず笑みをこぼした。
それにしても
病院で出会っただけの彼女に…
どうして、そこまで会いたいと願うんだろう?
「ねぇ、母さん」
「ん?なぁに、秀一」
「どうして…そんなに奈由に会いたいの?」
何気なく質問すると、ふいに、志保利の表情が冷静になった。
…かとおもいきや、何かを思い出したような遠い目をして、優しく…微笑んだ。
「…救われたのよね」
「救われた?」
「ええ。奈由ちゃんの言葉と…奈由ちゃんの……笑顔にね」
あの時
手から滑り落ちて
コップが床に、転げていった瞬間。
自分の、身体の限界を痛感したわ。
コップもまともに持てないほど
手足も弱って
小刻みに、震えていて。
その時、初めて自分の死期を感じたの。
もう、そう長くはない。
私は、たった1人の愛する息子を
この世においていかなくてはならないんだ、と。
ーーーーだけど
『大丈夫ですか?』
そう声を掛け、寄り添ってくれた……奈由ちゃん。
濡れてしまった床を、自らのハンカチで、何も躊躇せず拭いてくれた彼女。
何故かしらね。
あの時、彼女の優しさに触れて
心が、スッと晴れた気がしたの。
「きっと奈由ちゃんは……人をホッと落ち着かせる、そんな力がある子だと思ったわ」
それから彼女は
弱音を吐露する私に対して
力強くも、優しい言葉を掛けてくれた。
『高校だけじゃないです。大学生になったり社会人になったり…きっと沢山の秀一君の節目が見ることができますよ』
奈由ちゃんのあの言葉で…ハッとしたわ。
こんなところで、挫けちゃ駄目。
頑張らなくちゃ……ってね。