第23話:咲く恋の花
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
『よいしょっ』
奈由は、根元からグィッと1束摘むと、それを胸に抱え、強く握りしめた。
『……』
目を瞑り、精神を落ち着かせながら、ありったけの想いを込めて……雑草に妖気を送る。
すると、雑草からキラキラと瞬くようなオーラが纏いだし、次第に蕾みが現れ…膨らみ、そしてーーー開花した。
『…よし』
美しく咲いた、碧の花。
凛としている中に、華やかさと逞しくを兼ね備えたその姿は、息を呑むほどに美しく咲き誇っていた。
奈由は、その花を大事そうに携え、川の際まで移動すると
ゆっくりと……花を、川に流した。
手放した瞬間、川の勢いに乗って、どんどんと、流れに乗っていく花。
花の向かう先は、朝咲ちゃんが消え去った…その向こう。
ゆっくりと流れて…消えていく。
『朝咲…ちゃん…』
遠ざかる花を見つめて、ふい溢れた、彼女の名前。
『ごめんね…』
あなたの死を、受け入れられなくて。
でも、今度こそ、心からやっと
朝咲ちゃんの死に向き合える、そんな気がするんだ。
どうか、どうか、安らかに。
願わくば、またいつか
…どこかで
生まれ変わったアナタに
ーー出逢える日が来ますように。
『っ……朝咲ちゃーん!!必ず…必ずまた…どこかでっ…逢おうねー!!』
この想い…届いて欲しい。
そう願うと、叫ばずにはいられない自分がいた。
心の底から、朝咲ちゃんを偲び
心の底から、倖せを祈る。
追憶の世界に眠るアナタが、来世で、きっと、温かな暮らしをしていますように…と。
「…奈由」
『ふっ…っ…』
涙を溢すと、沈黙を貫いていた秀一がソッと隣に寄り添いながら、奈由の背中に、手を当てた。
背中から感じる、秀一の手の体温は
とても温かく、心地が良かった。
けして、1人にはしないと
言葉はなくとも、そう言ってくれているような…不思議な安心感を覚えた。
『また…いつか…ここに来る…っ…』
「……ええ」
そして
私達は、そう言い残して
ーーーーこの山を、降りた。
さて
晴れて修行を無事に終え、新たな力を手に入れた私は、一皮向けたような、生まれ変わったような…そんな胸中にあった。
身も心も…奈由であることには変わりないのに、木花だった時の能力を身に付けたことにより、他の人にはない、私だけの力を手に入れて、妙な自信と好奇心が芽生えていた。
霊界探偵助手としての未来に、一体どのような事が待ち受けているのか。
未知なる世界への、不安と期待。
そんな相反する思いを心に共存させながら…
いよいよ私は、霊界探偵助手としての、初めの一歩を踏み出そうとしていた。