第22話:過去の日の呪縛
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
『っ…っ…ぅ…んっ…』
気が付くと、奈由の身体は
秀一の腕の中に、綺麗に収まっていた。
秀一は、奈由の背にしっかりと腕を回し、落ち着かせるように、ポンポン…と背中を撫でた。
奈由は、その身を秀一の胸に預けたまま、涙と嗚咽を漏らし、そして次々と溢れる想いを、言葉にして吐き出していった。
『私……私がっ…っ…代わりに死んだら…良かったのかな…っつ…』
「……」
『もうっ…もう…分からないのっ…!私が生きてる意味は……なんなんだろう…!…さちゃんが………朝咲ちゃんが…死んだ意味って……なんなんだろうって!!何年経っても…答えが出せない…。それが…こんなに苦しいなんて…っ…うっ…』
この10年間
一度も、口にしたことはなかった。
〝死んだ〟という言葉。
朝咲ちゃんの死に触れるのが
ずっと、ずっと、怖かった。
認めてしまうのが、嫌だった。
川に飲まれて消えていった朝咲ちゃん。
もしかしたら、いつか
帰ってきてくれるかもしれない
なんて
そんなありもしない期待が
ほんの少しだけど、あったから。
「奈由、こっち向いて」
『…っん!』
秀一は、奈由の顎に手を当て、クイッと持ち上げた。
必然的に、重なり合う瞳。
泣き腫らした奈由の顔を
秀一は、優しい眼差しで見つめながら、言った。
「……最初から、意味を持って生まれてくる者など、ごく稀です。大半の人が、生きながら…生きる意味を、探していくものなんですよ」
『秀一…君?』
「生と死は紙一重です。生きている者は、皆いずれは死にゆく定め。俺も、奈由も…皆、ね」
妖狐として、何千年も生きてきた。
生きた年月の長さだけ
あらゆる生と死に、数多く触れてきた。
この手で、死に追いやった奴も数多。
仲間の死を、幾度と無く見送ったことも、数多。
ーー木花の死だって、その一つ。
「朝咲さんの死は…確かに、想定外で、とても悲しい出来事だったかもしれない。だけど、少しだけ考え方を変えて……朝咲さんの死は終わりではなく、始まりだと思ってみませんか?」
『朝咲ちゃんの死が……始まり?』
鼻を真っ赤にし、ポロポロと涙を零しながら、惚けた顔で秀一を見つめる。
秀一は、そんな奈由の頬に伝う涙を手で拭いながら、続けて言った。