第22話:過去の日の呪縛
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
『…まぁ、そんな感じかな。そりゃ、朝咲ちゃんの両親からしたら、いい気はしないよね。自分の娘だけが、犠牲になって…かたや私だけが…助かっちゃってさ』
生まれて初めて
人から、強い恨みを抱かれた。
朝咲ちゃんのお母さんの…憎悪を滲ませた、あの瞳。
忘れたくても
忘れることのできない…過去の記憶。
『さてと!』
奈由は反動をつけ、その場に立ち上がると
秀一と向かい合わせに立ち、凛とした表情で、平然とした表情で言った。
『時々思い出して、悲嘆する事もあるけどさ……でも大丈夫だよ。10年も前のことだもん。私は、生き残っちゃったんだし……背負っていかないとね』
見え透いた笑顔だってことは…百も承知。
だけど、無理にでも笑顔を作って
無理にでも、平常心を保たないと
また、心の中で
何かが崩れ落ちていく。
「生き残ってしまった……なんて、まるで、生きていることが間違っているような言い方ですね」
あまりに淡白な、淡々とした秀一の言葉と表情。
奈由は、二の句に継げず黙り込んだ。
「そんな、無理した表情で大丈夫なんて言われて…信じられるわけがないだろう」
『…っ』
「この10年、誰にも言わず、耐え忍んできたんでしょう。自分のせいだと…思い込み、自分を責めてきた。……だけど、アナタは何も」
『…っ憎いんだよ!!自分が!!』
池の水面に、小さな波紋が描かれた。
奈由の叫び声が響くと…その後は、まるで何事も無かったように、静寂さが一層増していった。
風の音と、蛙の鳴き声が
僅かに聴こえる、その空間。
だが、奈由は
振り絞りだすように…
ギリギリの精神で、言葉を紡いでいった。
『ぃ…一緒に遊んでた友達が…いなくなったんだよ…?その子の親からは…酷く憎まれて…っ……そんな状況で…自分の事……を……っ憎まずにいられると思う?』
「奈由……」
『分かってる。どう足掻いて…も…私に朝咲ちゃんを救える術なんてなかった……そんなの、分かってる!!だけど!……だけどっ……!』
時折、耳に何度もコダマするの。
〝何で、アンタじゃないの?〟
その言葉を思い出す度
哀しみで、胸がいっぱいになる。
私が死ねば良かったんだ…と
勝手に、結論付けて
勝手に答えを見出していた。
だけど、今更
死ぬ勇気なんか
微塵もないから…
死ななくて良い
生きてても良い理由が
何でも良いから欲しくって
無茶な正義感振り翳したり
良い子ぶったり
無理に…笑ってみせたりしてた。
だけど
もう、疲れた。
全部、全部
全部…………疲れた。