第22話:過去の日の呪縛
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
真っ暗闇の中を、灯す灯籠。
その明かりだけを頼りに、2人は広い広い庭を、静かに歩んだ。
2人とも、喋ろうとはしなかった。
だけど、不思議と気まずさはなく、むしろ、それが心地良く感じた。
話したいこと、聞きたいこと
お互いに、本当は、あるはずなのに
無理に、聞き出そうとは
………したくなかった。
『うあっ…!』
「おっと」
奈由は、小石に躓くと、秀一は、とっさに奈由の肩を抑えた。
『あ、ありがとう…』
「いえ…」
散歩に出てから、初めて交わした言葉だった。
2人は自然と向かい合い、お互いの瞳を見つめた。
さすがにこうなってしまうと、少し気まずさを感じてくる。
奈由は、少し目線を晒すと…申し訳なさそうに、振り絞るように、言葉を発した。
『あの……川でのこと……本当に、ごめんなさい。折角……修行中だったのに…』
「いや…………謝るのは、俺の方ですよ。奈由の様子が、最初からおかしかったことに、気が付いていたのに…無理をさせてしまった。本当に…ごめん」
『う…ううん!秀一君が、謝ることなんかないよ!まず、私がちゃんと…秀一君に事情とか…その…色々話してなかったのが悪かったから…』
お互いに、次に発する言葉を選びすぎてしまい、会話のテンポが悪い。
だが、暫くすると
秀一が意を決して、核心を突く一言を放った。
「……幻海師範から聞きました。10年前、あの川で…事故にあったそうですね」
『…うん』
奈由は、瞳を閉じ
ソッと、下を俯いた。
幻海師範から、既に事情は聞かされているだろうと…覚悟はしていた。
だけど
やっぱり、いざ知られると
なんだか、涙出そうになってくる。
『あははっ。10年も前の事なのにね…全然乗り越えられなくて、嫌になっちゃうね』
再び顔を上げ、秀一を見つめた。
軽く口角を上げて微笑んでみるが、自分でも可笑しくなるくらい、あまりに渇ききった笑顔。
すると奈由は、突如身体を方向転換させて、庭の小さな池まで歩んでいった。
そして、池の際まで近づいたところで、水面を見つめながら、その場にしゃがみこんだ。
秀一も、ゆっくりとした足取りで後を追い、奈由の隣に立ちながら、共に水面を見つめた。