第22話:過去の日の呪縛
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「まさか、あの時の娘が、奈由だったとはな。なんとも…不思議な巡り合わせだ」
『ご、ごめんなさい…!両親から、恩人がいたって話は……聞いてたんですけど……そ、それが、幻海師範だったこと…は…っ…覚えてなくて』
「当然だよ。あんなに小さかったんだからね。アタシだって、アンタが川で突然倒れたと聞いて……今日やっと、思い出したんだ。それだけ、時が経った…と、いうことさ」
年月は確実に流れているのに
奈由の時間だけは
どこか止まったままで
今もなお、ずっと
あの日の悲しみを、抱き続けている。
当事者に付き纏う、永遠の呪縛か。
「ご両親は元気かい?」
『…はい。とても元気に、暮らしてます。お父さんも、お母さんも…幻海師範に感謝してました。娘の命を救ってくれたんだって…』
「アタシは、何もしてないよ。アンタはアンタの生命力で生き抜いたんだ。本当に…あの小さい身体で、よく頑張ったよ」
当時を知る者だからこその、深みのある言葉。
奈由は幻海の言葉に、おもわず目頭が熱くなり、涙が込み上げてきたたが、何とかそれを振り払うと、幻海に笑顔を見せた。
『幻海師範。あの時は本当に…ほんっっとう~~に、有難うございました!お陰様で……高校生にまで成長しましたよ、私!』
明るく天真爛漫に感謝を述べる姿に、幻海は、おもわず言葉を詰まらせた。
そして、何も言わずに…奈由の頭を、ワシャワシャと撫でた。
「修行方法は幾らでもある。川には…もう無理して行くことはないよ」
『…はい』
「今日は、何も気にせずゆっくり休みなさい」
幻海は再び立ち上がると、部屋から出ようと、襖を開けた。
「何かあったら、遠慮なく声を掛けなさい。アタシは自室に居るからね」
『有難うございます。じゃあ…おやすみなさい』
「…おやすみ」
幻海は、少し微笑みを見せて、部屋から去った。
再び、一人きりになった奈由は、水に手を伸ばし、ゴクッと一口を飲み、喉を潤わした。
『ふぅ…』
軽く溜め息を漏らし、電気を再度消すと、布団の中へ深く潜り込んだ。
今はもう、ただ…眠りつきたい。
何も考えずに………全て忘れて
記憶を、閉ざしてしまいたい。
こうして縁あって
幻海師範に
出逢えたことは、とても嬉しい。
感謝も伝えられて…本当に良かった。
だけど
あの事故が
私にとって、思い出したくない過去であることには…
ーーー変わりは、ない。