第22話:過去の日の呪縛
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「奈由、入るよ」
『ふぇ!?は、はい!!』
部屋の襖越しに、突然名前を呼ばれ、身体がビクッと跳ね上がる。
勢いよく返事を返すと、スッと襖が開いた。
「アンタ、起きてたのかい」
『幻海…師範』
現れた幻海の姿を、奈由はボーッと惚けて見つめた。
幻海は部屋の中に入るや否や、襖を閉め、奈由の横に腰掛けた。
「どうだい具合は?顔色は…まぁ悪くなさそうだね」
『あ…はい。大丈夫です』
「あぁ…そうかい」
幻海は心底安堵したようで、珍しく、優しい言葉口調だ。
だが、この状況がイマイチ理解できずにいる奈由は、遠慮気味に、幻海に尋ねてみた。
『あの~師範?私一体どうして、ここに?えっと…確か修行中だったはずなんですけど…どうなってこうなって』
「川で倒れたんだよ」
『え?』
「思い出してしまったんだろう?10年前の…事故のことを」
淡々とした幻海の言葉に
奈由の頭の中は、真っ白になっていった。
バクバクと激しく、鼓動を刻み始めた胸に手を当てると
走馬灯のように、数々の記憶が蘇ってきた。
奈由は、呆然と幻海の顔を見つめながら、小さく声を発した。
『私…ぁ…川で修行して…て…』
そう。そうだ。
10年前の事故の事
あの日、あの時のことを
鮮明に、思い出してしまったんだ。
川に入った途端、涙が止まらなくなりそして、立っていられなくなって…。
それもこれも、昔の記憶に
心を蝕まれてしまったのが、原因。
でも、どうして?
どうして、幻海師範が…
「あの頃の事を思い出した」って
何故、そんな事を
アナタが言うんですか?
『アナタは一体……』
「すぐに、思い出せなくて悪かった」
『へ…?』
「あの事故、第一通報者は……アタシだ」
以前、両親から聞いたことがあった。
事故当時。
通報してくれた
1人の…お婆さんがいたことを。
川に流された私を発見し、そして懸命に治療にあたってくれたのだと。
名も顔も知らぬ
私にとっての、命の恩人だ。
でも、まさか、その方が
ーーーー幻海師範だったなんて。
『あの時、助けてくれたのが…幻海師範…?』
「アンタ…大きくなったね」
感慨深そうに呟く幻海は、少し嬉しそうに顔を緩めた。