第21話:短期修行の巻
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「やはり、顔色が優れないですね…」
奈由の顔は青白く、額には冷や汗を馴染ませていた。何かを怖じ恐れて、表情を歪ませている。
「もしかして……水場が、苦手なんですか?」
『っ……』
「何かあるのなら、言ってくれませんか。こんな状態で、無理をさせるわけにはいかない。それに…」
秀一は、真剣な眼差しを奈由に向けると、震える奈由の手を、強く握り締めた。
「もしも、何か抱えていることがあるならば…打ち明けてくれないか。何も知らなければ、肝心な時、君に…手を差し伸べられない。守ってあげることもできない。だから…」
貫くような凛とした瞳で奈由を見据える秀一の顔は、いつにも増して力強かった。
だが…その一方で
奈由は妙な、違和感に駆られていた。
秀一君、私のこと…見てない?
ああ、そっか。
私じゃなくて…私の中に眠る
あの人に、語りかけているのかな。
ーーー木花に……ーーー
『だ………だから、大丈夫!ほら、昨日から…慣れないこと続きで緊張してたからさ。でも、本当に何ともないよ。心配しないでね!』
おもわず、秀一の手を強く振り払った。
奈由は、マズイことをしてしまったと感じながらも、心の中に生まれてしまったモヤモヤを払拭できる術もなく、秀一から目を背けた。
「それなら、良いんですが…」
一瞬にして、2人の間には何とも言えない、気不味い雰囲気が漂い、顔を合わせることもままならなくなった。
「足元、気を付けて下さい」
『う……うん…』
秀一は先陣をきって、川の中に入った。
何とか靴を脱ぎ、素足になった奈由は、その後を追うように、若干の距離を開けながら、恐る恐ると川の中へ足を一歩、踏み入れた。
『…っう…』
想像以上に…冷たい。
淀みがなくて澄んだ水だな。
滞ることなく、流れていて
足に、絡み付いてくるみたい。
まるで、私を
逃さないかのように。
『…っ…ぅ…』
堰き止めていた何かが
崩れ落ちて行く。
記憶が……戻ってくる。
暑い日差しに照らされた
あの夏の日が
ーーーー鮮明に
ーーーーーーー蘇ってくる。
《何で、ウチの子なの…!》