第21話:短期修行の巻
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
『……ここ…』
辿り着いた場所は
石畳の階段を降りて、1時間ほど山道を下ったところにある
ーーーー人知れぬ、川だった。
水流は至って穏やかで、心地良い川と風の音とが、見事に融合して、心洗われるような、清涼感を満ちていた。
人の手が殆ど加えられていない、長閑で自然そのものの。
そして、奈由は…
あまりに穏やかに流れるその川を
足を止めて、静かに眺めていた。
「ここに咲く植物は、川の水が澄んでいるので、豊富な栄養を蓄えているんです。質の良い十分な環境で育まれた植物は、とても素直なので、妖気を受け入れやすい傾向があるんですよ」
『…そ…うなんだ…』
美しいこの情景とは裏腹に、奈由の表情は曇り気味で、言葉の端々が少し震え上がっていた。
そんな奈由の様子を、秀一が見逃す訳はなかった。
「奈由?具合でも、悪いんですか?」
『え?あ……う、ううん!何でもないの!ごめん、つい…ボーっとしちゃって…でも、全然大丈夫!』
「本当に?」
『本当に本当!で?ここでは、どんな修行をするの?』
あからさまな空元気を出し、平然を装いながら、秀一の心配を無理に振り払うと、奈由は、いつも通りの天真爛漫な表情で秀一に問いかけた。
「浅瀬を渡って、川の向こう岸までいきます。とても綺麗に咲いている植物があるので、それを使って妖気を注入する練習をしてみましょう」
秀一は、川を挟んだ向こう側を指し示すと、淡々と、履物を脱ぎだした。
「浅瀬とはいえ、足元が濡れてしまうので、靴は脱いだ方が良いですよ。1人で脱げますか?」
『………ぬ、脱げるよ!もう!子供扱いしないでよね!』
「ははっ、ごめんごめん」
秀一の冗談にツッコミを入れながら、照れ臭げに笑う奈由は気を取り直し、靴紐を解こうと、その場にしゃがみ込んだ。
『………っ…』
俯きながら、靴紐に手を掛ける。
だが、手先が驚くほど、震えていて上手く解けない。
全身で、拒絶してるんだ。
この川に…入りたくない、と。
「奈由」
『……へ?』
精神が錯乱しかけた瞬間。
秀一に名を呼ばれて、我に帰り、俯いていた顔を上げた。
秀一は、奈由と同じ目線まで腰を下ろすと、心配そうな表情を浮かべていた。