第21話:短期修行の巻
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「今日は、ゆっくり休め。おやすみ」
『あ、有り難うございました…!』
幻海は、離れにある自室へと去った。
奈由は、ヘトヘトだった姿勢を再度立て直し、正座で深々とお辞儀をしながら、幻海の姿を見送った。
そして、幻海の姿が完全に見えなくなると、その場に残された奈由と秀一は、おもわず顔を見合わせ微笑んだ。
「奈由、お疲れ様でした」
『お疲れ様、秀一君…。なんか、座禅にまで付き合わせちゃったね…』
「いえ。俺がそうしたかったから、したまでです。本当…頑張りましたね」
秀一は、奈由の目線まで身体を屈ませ、労わるように、奈由の肩に手を添えた。
今は、そんなちょっとした優しさが奈由の心にジンワリと沁みる。
『ははっ、有り難う。でも…やっぱり、秀一君は凄いね。ずっと同じ時間、座禅組んでたのに、殆ど疲れてなさそうだし』
「多少、疲れてはいますけど、まぁ…慣れてますから。奈由は、初めてで上出来ですよ。今夜はゆっくり休んで、明日に備えないとね」
『ん…そうだね…』
秀一は、その場にゆっくりと立ち上がると、奈由に手を差し伸べた。
奈由は、差し出された手に手を添えると、そのまま秀一に引き揚げられるように、立ち上がった。
「じゃあ…ゆっくり休んで下さいね」
『うん…秀一君もね』
「ええ…」
人里離れ、静寂に包まれたこの場所で
夜の、涼しげな風を感じながら
何故か……2人は手を離せないまま
何も言わず、静かに見つめ合った。
『あっ………』
ドギマギとして、かつてない妙な気持ちにさせられてしまう。
何故だろう。
ーーー離れたくない。
明日も、ずっと一緒なのに
今日が終わってしまうのが
心細くて、寂しくて
今、この瞬間が
もう少し、続いて欲しいと願ってしまう。
「じゃ………おやすみ」
『え、あ…おやすみ…』
秀一は、奈由の手を手放した。
素っ気なく、何事も無かったかのように、その場を後にした。
『………』
あまりに淡白で、アッサリとした秀一の態度に、名残惜しさを感じつつも奈由は、切ない眼差しで…立ち去る秀一の背中を見つめていた。
見つめ合い、手を握り合っていたあの僅かな時。
2人の間には、甘く、そして淡いが想いが絡み合い、交錯している。
まるで、何か見えない糸にでも、繋がれているような。
言語化できない、あまりにフワフワとした気持ちが、2人の心をギュッと締め付ける。
届きそうで届かない
そんな、もどかしい立ち位置で
俺は
私は
一つ屋根の下に。
きっと、今夜は眠れない。