第21話:短期修行の巻
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
するとコエンマは、ワイシャツの胸ポケットから、二つ折りにした紙を取り出し、奈由に手渡した。
「ここに書かれた住所の寺に、1週間泊まり込みで行ってきなさい。幻海という霊能力者が、奈由に特訓をつけてくれることになっておる」
奈由は、手渡された紙を開き、記された住所に目を通した。
『…………』
その時
手の先から、ビリビリと痺れる感覚が押し寄せた。
表情は強張り、異常なほど心拍数を上がっていく。
『ここ……』
「ん?どうした?幻海を知ってるのか?」
知らない。
ただ…この…住所から連想する
過去の記憶が…蘇ってくる。
出来ることなら
二思い出したくはなかった。
幼い日の、残酷な…記憶。
「おい、奈由?」
『…え?あ!?ご、ごめんなさい!いや…あの…昔に家族で行ったことのある土地だったので…それを……っ…お…思い出しまして…』
奈由は紙を二つ折りにして、素早く自分の鞄にしまった。
再び、アイスティーを口にして、動揺する気持ちを落ち着けようとした。
「んん?そう…か」
あからさまに、様子がおかしい。
さすがのコエンマも、奈由の異変には気が付いていたが、あまり深くは突っ込まない方が良さそうだと…判断した。
「では、詳細はまた知らせることにしよう。1週間の滞在だからな、ご両親には心配を掛けないように、何か言い訳を考えておけ」
『そ、うですね。友達の家にでも泊まりに行くとか…色々言い訳考えとかないと!!あ、私もう一杯ドリンク飲もうかな。コエンマさんは?何かいりますか?』
「お?おお。じゃあ同じものをもう一杯…」
『私、入れてきます!ちょっと待っててくださいね』
「……すまんな」
奈由は、席を立ち、足早にドリンクコーナーへ向かった。
『ふぅ…』
震える手で、飲み物を入れ直しながら、治る気配のない動機を、必死で止めようと…自分の心に繰り返し、呼びかけた。
ーーー落ち着いて、私。
あの時のことは、仕方なかった。
忘れるようにって
お父さんからも
お母さんからも言われたんだから
落ち着いて。落ち着いてよ。
もう…悔やんだって
取り返しが…つかないんだから。