第16話:月夜の願い 後編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「……ん…」
“生きている” この感覚は…
「…っ!!」
南野は瞼を開き、倒れ込んでいた身体を咄嗟に起こした。
「生きてる!?じゃあ、母さんは一体………」
母さんを助ける事と引き換えにしたはずの魂が…まだ、ここにある。
まさか…取り引きが失敗したのか?
不安に駆られた南野は、病室へ向かおうと立ち上がった。
だが、立ち上がった瞬間
視界に一面に広がる光景を前に
一瞬にして、時が止まったように感じた。
倒れ込む幽助。そして、奈由。
気絶する前の記憶が、走馬灯のように蘇り血の気が引いていく。
横たわる2人の目は、閉じられたままだ。
南野は震える足で、奈由に近付いた。
まさか、まさか
まさか、そんな…
俺の身代わりに
死んだのか……?
「お……起きてくれ!おい…!おい!!このは…」
ーー木花…………?ーー
『んん…………』
南野の呼び掛けで、奈由はゆっくりと瞼を開いた。
瞼を開くと、すぐさま南野と視線がぶつかり合った。
肩を、抱えてくれてるのかな。
南野君の顔が、とても近くに感じる。
『南野…君…?』
意識がしっかりとした頃、彼の名前を呟きながら、その美しい顔に手を添えた。
手から…南野君の体温が伝わってくる。
良かった。
良かった。南野君、生きてる。
奈由の顔に、自然と笑みが溢れた。
だが、そんな奈由の表情とは裏腹に、南野の表情は、色々な感情の詰まった何とも複雑な表情を浮かべていた。
『南野…君?』
「…………っ……」
『わっ』
彼は何も言わず、奈由を力強く抱き寄せた。
抱き寄せられたその行為に、奈由の胸がドキッと跳ねたが、瞬時にその腕から、彼の想いがひしひしと伝わった。
ー良かった…生きていてくれてて…ー
ギュッと抱き寄せられた腕の中。
その腕の中はとても心地良い。
互いに命ある安堵から、思わず涙がこみ上げそうになったが、まだ落ち着いている場合ではない。
『南野君。志保利さんの所へ行ってあげて』
「しかし、君をおいては…それに幽助も…」
『私は大丈夫。幽助君は私が起こすから。ほら、早く行って!』
抱き寄せられた腕から離れ、真剣な眼差しと笑顔で南野を見つめた。
最初は躊躇いがちな表情を見せた南野だが、首を縦に頷かせて、すぐさま、志保利の元へと走っていった。