第16話:月夜の願い 後編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
『そっか…屋上………』
前世の話をしたあの日、あの場所。
あそこは…そう、病院の屋上。
『南野君……もしかして屋上にいるの?』
あれ程までに絶望していたにも関わらず、奈由は、再び身体に鞭を打った。
考えている暇はない。
奈由は無我夢中で、あの場所を目指した。
ーーー屋上へ…!
「暗黒鏡よ。月の光を受け目覚めたまえ。その表に、我が望みを映し出す力を示したまえ」
空に浮かぶ満月を、その身に映し出す暗黒鏡。
そこに手を翳して唱える主は…南野秀一、もとい蔵馬である。
すると、南野の唱えた言葉に反応した鏡が、命と引き返しにしても叶えたい南野の望みを…その身に映し出した。
《ーーこの女の倖せな人生。それが、お前の望みか?》
映した出されたその姿は…愛する母の姿。
南野 志保利、その人である。
「そうだ」
「おい!お前間違ってねぇか!?彼女が助かっても…お前が死んじまったら、何もなんねぇじゃねぇか!?」
蔵馬から鏡を受け取る約束をしていた霊界探偵、浦飯幽助。
その場に居合わせた幽助は、これから行われようとする儀式に疑問を呈し、必死に止めようと叫んだ。
しかし、南野の覚悟は揺るぎないものだった。
「これしか方法がないんだ」
《よし。では、お前の望みを叶えてやろう…》
「ぐっっ!うっ!!」
鏡の中から、黒い靄と稲光に放たれた。
纏わりつくように、南野を包む靄と電撃が、御魂を取ろうと残酷な儀式を開始したのだ。
しかし
「な…何をする!?」
「おい!鏡!!俺の命を分けてやる!そしたら…こいつの命を全部取らなくても済むだろう!」
幽助は、鏡に向かい手を差し出した。
次第に鏡は、幽助の身体も電撃と靄で包んでいく。
「何を考えているんだ!お前は!!」
「…子供が死んだ時の母親の泣き顔。あれは、見られたもんじゃねぇぞ…!あんなバツの悪いもんはないぜ!!」
幽助だから、わかるその想い。
大切な人と引き裂かれる哀しみは
残す方も、残される方も
絶望の果てに突き落とされる。
その苦しみは、どんな言葉を尽くしても表現のしようがない。
だが、その苦しみを
南野は、蔵馬は、既に知っていた。
苦しいほどに。
「……わかっているさ…そんなこと…」
初めてじゃないんだ。大切な人と、離れるのは。
その辛さを
俺は身を持って理解しているはずなのに
どうして…
いつも、大切な人の側にいられない運命なのだろうか。
辛いさ。とても。
母さんと離れるのは。
そして
彼女とだって、離れたくない。
彼女のそばに…
できることなら
ずっと…………