第16話:月夜の願い 後編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
『はぁ、はぁ…はっ…』
病院の中庭まで降りた奈由は、乱れる呼吸を整えられずにいた。
休むことなく動かし続けた足も
棒のようになり、ついに動きを止めた。
その刹那、ふと頭上に違和感を感じ、頭をゆっくりと持ち上げた。
『満月……』
そこには美しく輝く満月。
今の奈由には、まるでその月が、死神の姿に映る。
頭上に君臨するその存在感は、奈由に恐怖と絶望を与えた。
『………っ…』
奈由はその場に、力なくしゃがみこんだ。
圧倒的な月の存在を前にして
後ろ向きな気持ちが、ドッと奈由の身体を飲み込んでいく。
もしかして…もしかして…
ーー南野君、死んでしまったの?
『……っ…ぁ…は…うっ…』
まだ確証はないのに、心によぎったその想いが、一気に奈由の心を押し潰した。
涙腺の糸がプツンと途切れて、涙がとめどくなく溢れてくる。
まるで、世界に1人残されたような孤独感と喪失感。
それを一度にして味わっているような、そんな気持ち。
決して死んだと決まった訳ではないのに、心の中は既に絶望に塗れて、それ以上の希望を見出せなくなってしまった。
『うぅ…南野、君……っ…死なないで…お願い…お願い、死んじゃ嫌だ!!』
天に昇るように響き渡る奈由の叫び声。
まるで、月にまで届くように…ーー
その刹那
奈由の頭の中に
ある記憶がフラッシュバックした。
”なにはともあれ、君が無事で良かった”
そう言った南野君の優しい顔。
確か、その記憶は…
南野君が、私に前世の話を初めて聞かせてくれた日の事だ。
前世の記憶を失った私は、自分が妖怪だったという話を受け止めることができなかった。
突如思い出された、その記憶。
奈由は、その記憶に
ある種のメッセージ性を感じた。