第16話:月夜の願い 後編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「……蔵馬の処へ行こうとしてるのかい?」
『……うん』
「蔵馬が…何処にいるのか知ってるのかい?」
『知らないけど……わかってる』
これまでの全てを、これまでの出来事を
パズルの様に組み合わせていけば
少なからず、南野君の願いが…私には見えてくる。
命を引き換えにしてでも、叶えたい願い。
それはきっと……お母さん。
ー志保利さんの命を守ることー
『ぼたんちゃん。行かせて』
「奈由ちゃん。蔵馬はあの餓鬼玉を盗んだ剛鬼の仲間なんだよ!?アンタの首に、酷い怪我を負わせた奴だ。蔵馬だって、どんな奴か分かったもんじゃない。そんな奴のところに…奈由ちゃんを黙って行かせる訳にはいかないよ!!」
必死に訴えかける言葉に合わせて奈由を引き止める手の力強くなっていく。
奈由は、汗滴る顔をゆっくりと持ち上げ、ぼたんの姿を瞳に映した。
「実は今ね…宝を取り返すために、幽助が蔵馬に会いに行ってるんだ」
『幽助君……が?』
「ああ。だから、後のことは幽助に任せて大丈夫。アンタは、霊界探偵でも何でもない。関係ないんだから!自分を危険に晒す必要なんて…ないんだよ?」
奈由ちゃん…アンタが
《自分が妖怪なのか、人間なのか分からない》
そう不安を吐露した日の事を、私は忘れてないよ。
悲痛の叫びを挙げた奈由ちゃんの葛藤と苦悩を、目の当たりにした時
本当は…本当はさ
奈由ちゃんの姿に
美しい妖怪姿が…二重に重なって、見えたんだ。
その姿を見た時、言葉にならない想いが、胸に込み上げた。
人間と妖怪の狭間で揺れて、本当は辛いんだろう?
そんなアンタが…どうして突然
妖怪である蔵馬に執着するんだい?
『ぼたんちゃん』
「え?」
奈由は、ソッとぼたんの手に自分の手を重ねた。
引き止めてくるぼたんの手から、ぼたんの想いが…奈由の心に沁みるように伝わってくる。
私の不安を…最初に受け止めてくれたのは、ぼたんちゃんだった。
妖怪と人間の狭間で揺れる私に、何も言わず、寄り添ってくれた。
『ありがとうね。私、もう大丈夫だよ』
「奈由ちゃん…?」
ーー儚くも美しい。それでいて残酷な、前世の物語。
受け止められる器のない、普通の人間な私は…もう終わりにする。
南野君が〈死ぬ〉かもしれない。
その現実を前に、私はやっと…
ひとつの覚悟を見出した。
私は、群青 奈由。
そして、妖怪…木花でもあるんだ。