第16話:月夜の願い 後編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「奈由ちゃん!お願い!待っとくれよ!!奈由ちゃんってば~!」
家を出てから、ノンストップで600メートルほど走った頃、後方から必死に奈由の名前を叫ぶぼたんの声が聴こえてきた。
振り返れば、走るスピードが落ちてしまう。
無視するのは、心苦しいけれど
今は反応している時間さえ惜しい。
奈由は、前だけを見据えて走り続けた…
が
『っえぇ!?ぎゃ!!!』
ドカッッ!!!
「は!?ちょっ…奈由ちゃん!!」
躓く要素など無い平坦な道で、まるでコントのように、全身を地面にピッタリとくっ付け、奈由は倒れた。
「もう…奈由ちゃん!大丈夫かい!?」
結局、あっさりとぼたんに追いつかれてしまった。
ぼたんは、乗っていた櫂から降り、横たわる奈由の側に寄った。
『っっつぅぅぅ…』
全身に、鈍い痛みが走る。
擦りむいた膝からは、血が滲んでいる。
額からは、ポタポタ…と汗が流れて、地面を濡らしていく。
か…身体がきつい。
だけど…行かなきゃ!
「駄目!奈由ちゃん!」
体制を立て直し、再度走り出そうとした瞬間、ぼたんに腕を引っ張られた。
ぼたんの声は、いつもの明るい口調ではなく、真剣に訴えかける厳しい口調。
その声の勢いに圧倒されて…奈由は、ぼたんの手を振り払えなかった。