第15話:月夜の願い 前編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
想い出せないどころか、自分が妖怪であった事実に嫌悪感さえ抱いた顔を見せた。
何も覚えていないのでは、そう…だよな。
想い出してもらえない事が、悲しくないといえば嘘になるが
不思議と、そこまで絶望はしなかった。
むしろ、これで良かったのだと…自分に言い聞かせる。
今までの俺ならば、無理にでも記憶を引き出すか、想い出さずとも、彼女をまた奪うか…していたかもしれない。
だが、今ではそのやり方も、自分の性に合わない。
そんな風に考える様になったのは、きっと、南野秀一になったあの日から。
君が、群青奈由として生きている間
俺も南野秀一として、母から愛情を注がれて…1人の人間として生きてきた。
その愛や優しさが、俺をこうしてくれたのかもしれない。
君が倖せなら…それで良いと想おう。
人間として暮らしていけば
危険な目に合わせる事も…なくなるんだ。
それで、良いじゃないか。
「おーい。南野、何見てんの?」
「え?あ…」
自分の席の前に座るクラスメイトから、突然声を掛けられた。
ボーッと窓の外を眺めていて、だいぶ鈍い反応を返してしまった。
「ああ、F組のやつらじゃん。なに?誰か知り合いでもいんの?」
「………いや、別に」
窓の向こうにある校庭で、友人達数名と遊んでいる群青 奈由。彼女の姿がある。
今ではこうして、遠くから彼女を見守る日々。
見かける彼女は、笑っている事が多い。
表情も豊かで、天真爛漫さが伝わってくる。
友人達からも家族からも、愛されて育ってきたんだろうと感じる。
その笑顔を…俺は遠くから見つめては
切なくもあり、同時に心が和らぎもする。
「あ、あのグループのさ、群青って子!けっこう可愛いよな。実はうちの学年で人気あるらしいぜ。今度声掛けてみよっかなぁ」
「………へぇ」
ーーー残酷な現実。
ただ…彼女の倖せを願うと決めたはずなのに
もしも、いつか彼女が
俺じゃない他の誰かと結ばれるなんて
想像するだけで、脳が焼け切れてしまいそうだ。