第15話:月夜の願い 前編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「木花…」
木花との再会は、突然だった。
やっと、見つけた。やっと、出逢えた。
街中に、突如現れた彼女を
逃すまいと、腕を掴んで引き止めた。
きっと、彼女も
俺と同じように、再会を待ち侘びていたはず。
そう信じて疑いもしなかった俺は
彼女の姿に……言葉を失った。
ーーなんて、微弱な妖力しか残っていないんだ。
なにより
俺を見つめる彼女の瞳は
俺との再会を待ち侘びていたとは…到底思えない反応で
怪訝な面持ちで、俺を見つめてくる。
俺は、瞬時に悟った。
ーーそうか。転生に…失敗したのかーー
思い上がりも甚だしい。少し考えれば、分かったはずだ。
彼女を危険に晒し、挙げ句の果てに、彼女を死なせた。
人間界へと逃げ込む彼女の魂は
見るからに、弱りきっていたじゃないか。
そんな状態で、転生が上手くいく方が難しかった。
どうして、そこまで考えが回らなかった。
あまりに、期待と希望を抱きすぎていたからか?
だが
「木花!」
膨らみ続けた彼女への想いを
俺は、ぶつけずにはいられなかった。
彼女が俺を忘れていようと
俺にとっては、ずっと逢いたかった…君なのだから。
無理矢理抱き寄せた俺の腕から、君が逃れようとすることも…覚悟の上。
『離して!!』
彼女は…その場を立ち去った。
気がつくと、空から雨粒が降り注いだ。
道行く人々が、突然の雨に慌てる中、俺は暫くその場を動けなかった。
行き場をなくした、想い。
女々しくて、弱い自分に、やり場の無い怒りさえ感じる。
ただ今は…雨の雫と一緒に
自分の涙を流すことでしか、想いを消化する術が見つからない。
流れて、流れてくれ。
溢れた木花への想いと、思い上がっていた恥ずかしい俺
どうか消えて、無くなれ。どうか。
どうか。