第14話:月夜の訪問者
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
『ぼ、ぼたんちゃん!?』
開かれたカーテンの向こうには、櫂に乗りニコヤカに手を振っている、ぼたんの姿がある。
コエンマは、窓の鍵を開け(また勝手に)ぼたんを部屋の中へと招き入れた。
「遅かったな、ぼたん」
「コエンマ様、遅くなりました。奈由ちゃん…邪魔するよ」
『ぼたんちゃん、どうして…?』
突然の訪問に、驚きを隠せずにいる奈由を前に
コエンマとぼたんは、アイコンタクトを交わしている。
「奈由ちゃん、突然の事で驚かせてごめんよ。このお方は、コエンマ様。霊界で2番目に偉い方で、私や幽助の上司にあたる方だよ」
ほ、本当に上司だったのか…この見た目で…。
と、見た目と役職のギャップに驚くのも束の間、コエンマは奈由に向かい一礼した。
「…いや、先程は大変失礼した。非礼を詫びよう」
「コ、コエンマ様、奈由ちゃんに何かしたんですか!?」
「んぐぐ…」
怪訝そうな顔でぼたんから睨まれ、コエンマはバツの悪そうな表情を浮かべた。
奈由は、2人のやり取りを見守るだけで、ニの句に継げずに黙ったままだ。
「実は早急に、君に折り入って聞きたいことがあってな。勝手ながら、部屋で待たせてもらっていた」
『き、聞きたいこと…?』
嫌な予感と不安が一瞬、心に過ぎった。
不穏な空気が、ある程度の間合いを取る3人の間に流れる。
「……蔵馬」
『っえ…!?』
ー蔵馬ー
突然あげられたその名前に、過剰に反応を示した奈由。
勿論…その反応を、コエンマは決して見逃さなかった。
「やはり、蔵馬とは知り合いか」
『……っ…』
あからさまに動揺する奈由の反応を前に、ぼたんが不安そうな表情を見せた。
「ぼたんから、おぬしの事は報告を受けている。妖怪であった事も勿論。ただ、ぼたんの話だけでは、君が人間界に害のない存在なのか確信が持てず…申し訳ないが、こちらでも少し調べさせてもらうことにした」
『調べる?何を…ですか?』
「人間名、群青奈由。妖怪名…木花。魔界屈指の治癒能力者で、妖花族の長だった者。人間に転生するも、弱り切った身体では転生しきれず、前世の記憶失ってしまった…そうだな」
『っ!!』
何で…そんなこと知ってるの…!?
「亡くなった際の状況だが、君の亡骸は妖花族の里を離れた場所で、狐の死骸と寄り添うように倒れていたそうだ。その狐が…妖狐、蔵馬だということも調べがついている」
衝撃的な言葉の数々に
奈由は、ただ呆然とその場に立ち尽くした。
どうやって調べ上げたのかは、全くわからないが
忘れ去られた遥か昔の記憶を思わぬ形でいとも簡単に掬い上げられ、
心がついていけずにいる。