第12話:温もり
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ガシッ
「行かないで…下さい」
これで、3度目だ。
掴まれた左腕。記憶と感覚が、また鮮明に蘇る。
この手を、過去2度も振り払った。
だけど今は……あの時とは、違う。
私は、色んなことを知りすぎた。
『南野君……お願い。離して』
「嫌です」
腕を掴んだまま、南野も立ち上がった。
南野を、至近距離で背後に感じる。
奈由は、決して
後ろを振り返ろうとはしない。
かといって、振り払おうともしなかった。
「………木花」
少し躊躇いがちに、その名を、呼ぶ南野君の声は
今まで、聴いた言葉の中でも
一番穏やかで、一番優しい声だった。
だけど、その名前は
『私は……木花じゃ…ないよ…』
私じゃない。
『…ぇ…えっ?』
背中に、突然温もりを感じた。
あまりに、優しく包まれていて、気が付くまでに時間を要した。
南野は、背後から奈由を抱き寄せた。
まるで、ガラス細工でも扱うように、奈由を優しく包み込む。
南野の体温と、奈由の体温が、制服を隔てて、互いに伝わり合う。
『み、な……み…のく…』
心臓が、もの凄いスピードで心拍を刻んでいる。
顔は熱を持ち、頬はきっと真っ赤に染まっている。