第12話:温もり
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「こっち!焼きそばパン2つ!」
「ワッフル1つくださーい!」
「こっちもこっちもー!」
急いで来たものの、購買は既に凄い人だかりだ。
ここで萎縮しては、売り切れてしまう!
奈由は、購買に詰め寄る人混みの中に、果敢に飛び込み、
手を高く上げて、負けじと、大きな声を出す。
『こ、こっちも~!コロッケパン1つください!!』
「はいよ~!150円ね!」
奈由の必死の叫びを購買の店員が、運良く届き
心の中でガッツポーズをしながら、財布を取り出そうとした。
「これで」
自身の背後から、聴き覚えのある声がする。
長い腕が、奈由の目の前を通過して、お金を店員に渡している。
「ま、まいど…」
店員は、何故か頬を真っ赤に染めている。
奈由は背後へと、視線を移した。
『…み、み、南野…君!?』
南野秀一。
彼の姿が、そこにある。
驚きのあまり、大声を出すも
南野は、奈由の様子には、全くお構い無し。
「どうも」と言って、コロッケパンを片手で受け取り
もう片方で、奈由の手を握りしめ、購買を後にした。
『ちょっ…ちょっと、どこ行くの!?』
手を握られたまま、引きづられるようにして南野の後をついて行く。
逃れることができないほど、強く手を握られている。
南野は、奈由の問い掛けに一切答えず
黙ったまま、廊下を歩き続けた。
しばらくして到着した場所は、学校の一番隅にある資料室。
「どうぞ」
やっと聞いた彼の声は、少し怒っているようにも聞こえた。
だからといって、凄く威圧的でもない。
訳の分からないまま奈由は、人気のない資料室の中へと入った。