第11話:溢れた葛藤
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「ええ!?奈由ちゃん!?どうしたのさ!?」
「おい!奈由!?」
2人の問い掛けに答えず、私は身体を振り返り
全力でその場を走り去った。
家とは、反対方向だが
でも、一刻も早くその場から立ち去ってしまわないと
自分の心が持たなかった。
一瞬だけ見えた、南野君の…表情。
それを見た私の心に、波のように、何ともいえない
罪悪感が押し寄せた。
ーーもう、関わらない方が良いですね。
ーー君をもう、危険な目に合わせたくないんだ。
屋上で聞いた彼の言葉。
あれは、私のためを想った、真心だった。
それを、私は…無神経にも踏み躙っているんだ。
私が危険に晒されないために、関わらないことを選んでくれたはずなのに
私は無意識にも、自ら、彼の存在を意識して行動している。
走って。走り去らないと。
…彼の、目の届かないところまで。
『た、ただいまぁ…』
こっそりと、家のドアを開ける。
リビングでテレビを観ている両親に、気付かれないように
忍び足で、二階にある自分の部屋へと向かった。
『はぁぁぁぁぁぁぁぁ…』
無事に部屋に入ると、魂が抜けそうな大きなため息が漏れた。
暗くなった部屋に、灯をともす。
無造作に鞄を床に置き、部屋着に着替えようと制服を脱いだ。
いつもなら、ゆったりとした部屋着を好んで着るが
今日に限っては、タートルネックの、少し厚手の物を身に付ける。
…首元が、目立たないように。
服を袖に通し、すっぽりと首元が服で隠れると
心なしか、安心する自分がいた。
手の跡が消えた訳ではないけど、誰にも気が付かれないで済む。
私も、見ないで済む。
『ふぅぅぅ…』
私は、仰向けの状態で、力なくベッドの上にダイブした。
天井の真っ白な壁を、ただただボーっと見つめる。
何も考えられないほど、心も身体も疲弊していた。
このまま……眠ってしまおうか。