『Please Please stay by my side forever.』
「あんたは、ソーモンで実家に顔出してきたでしょ」
「えっ、そりゃまあ…。いつの間にか、兄貴の所に子どもがいたりしてビックリしたけど、どんなに疎遠でも実家だし。
一応、何かあった時の為に、悔いが残らないようにしておこうかなとか」
「悔い、ねえ…。じゃあ、あんたがアタシを抱いたのも、悔いが無いようにってやつ?」
一瞬、息が詰まった。
メディアは平然とそう言うが、ロナルドは一瞬身体を強ばらせた。
「違うの?」
「いや…正直、そんなこと考えてなかった」
「…あっ、そう」
「ごめん、怒った?」
「いや、その逆。アタシなんかを最後の女に選んだら、それこそ後悔するよって話さ」
「なんで?」
「ちょっとは自分で考えな」
メディアはそう言って、静かに煙草を口に運ぶ。
ロナルドは、返す言葉が見つからず、ただ彼女を背後から抱きしめた。
「メディア姉さんは…オレのこと、嫌い?」
「嫌いな男にホイホイついていくような女じゃないよ、アタシは」
「じゃあ、オレのこと好き?」
「まあ、それなりに」
「…なに、それなりって」
「こうやってくっついてて、それなりに幸せだと思えるくらいってこと」
正直、ロナルドはどう返して良いものか分からなかったが、抱きしめた腕にギュッと力をこめた。
「オレは…好きだよ」
「…どのくらい?」
「姉さんが、人生最後の人だったら良いなと思うくらい」
「…そうかい」
紫煙が目に入って、涙が出そうになる目を、メディアはギュッとこすった。
まだ吸いかけの煙草を、無理矢理灰皿に押しつけて、小さくため息を吐く。
「あのね、もしステップであんたが死んだら、確かにアタシはあんたにとって最後の女になるけど、生きて帰ってきたらまだ何十年も人生は続くんだよ」
「分かってる。だから、その何十年も一緒にいたいんだって」
「だったら尚更。アタシは、戦うことしか脳のないガサツな女で、しかもあんたより5つも年上で、もう三十路なわけよ」
「オレだって、もう30近いよ?」
「男は良いの。年取ったって価値は落ちないんだから」
「なんだよそれ、価値って誰が決めるんだよ」