弟ぶるーす
そこへ同意したのは、双子とはいえ弟がいるアガタだった。
「でも、多少こき使うくらいがちょうど良いわよ。なんというか…暇されてると、生意気だと思うわ」
「陛下のおっしゃる通り、弟なら余分に仕事をしてくれたって良いといいますか…平等に二等分してはかえって釣り合いが取れないものでしょう」
「いや、だから…その理屈がよくわかんないんだけど」
尚もメディアは怪訝そうだったが、ルビーは小さくため息を吐いて「認めてしまうと、少し悔しいのですけれど」と切り出した。
「わたくしとタウラスは3歳違うのですけれど…子どもの頃は、もちろん何をしてもわたくしの方が上でしたわ。
勉強、術法、体力においても、あの子がわたくしに勝てるわけがありませんでした。
ところが、これが男女差というものなので、仕方がないことだとは思いますが…あの子はどんどん大きくなって、わたくしが17歳の時にとうとう身長を抜かれてしまいました。
もちろん、もう腕力や体力では敵いません。…メディアさんには、この感覚はないかもしれませんが」
「いやまぁ、確かにその辺の男じゃ、アタシも負ける気はしないからね」
とはいえ、自分は一応武術で身を立てている人間であり、魔術士となるために学んできたルビーとタウラスなら、肉体的には一般の姉弟と変わらないということは想像がつく。
「表面上は、大したこと無いという振りをしてまいりましたが…タウラスがわたくしを見下ろしている、この感覚はなんとも表現しがたいものでした。
強いて言うなら、屈辱とでも申しましょうか…」
「わかるわかる!あたしもそうだったわ!!
13歳くらいの頃までは、あたしの方が背が高かったのに…ある時ネラックへ帰ったら、ピーターがほんのちょっとあたしより大きいのよ。
なんだか頭にきて、意味もなく頬を引っ張ってやったわ」
確かに、ピーターはある時急に背が伸び始めて、むしろ身体が追いつかずに成長痛に悩んでいた時期があったが…そこへ来て、里帰りしたアガタに頬を引っ張られては、さすがに可哀想な気がする。
「いや、一応確認しとくけど…別にそれ、タウラスやピーターが『どんなもんだい』的なこと言ったわけじゃないんだよね?」
「そんなことを言った暁には、もれなくファイアーボールの的にしてあげるところでしたわ」
「あたしも、普通にライトボールをぶつけてたかもしれないわね。ピーターのくせにあたしに自慢しようなんて、生意気だわ」
「…さいですか」
そうなることが分かっていたから、タウラスもピーターも間違ってもそんなことは言わなかったのだろうが。