姉貴えれじぃ


「おいピーター、先月議会の議事録ってどこにあるんだ?」

「執務室の奥から2番目の棚。ついでにインクの替え持ってきて。タウラス、術研究所の前年度決算報告は?」

「それなら、昨日アガタのサインもらって、もう片づけちまったぜ?」

「あれ、そうだっけ?」

「おいおい、この忙しさでボケちまったんじゃねえだろうな。ロン、ついでだから茶と茶菓子でももらってきてくれ。たまには息つかねえと、ピーターが壊れちまう」

「わかった。じゃあ、執務室行ってくる」

ここはバレンヌ帝国の帝都・アバロン。
この街で一際目立つのがアバロン宮殿であり、ここはその一室である。

大きな机の上には大量の紙が散らばり、3人の男たちがそれらと格闘していた。

言われなければ分からないかもしれないが、彼らは一応、歴としたバレンヌ帝国兵である。
ピーターは、カンバーランド出身のホーリーオーダー。
タウラスは、術研究所所属の術士。
ロンことロナルドは、軽装歩兵。

どちらかと言えば文官のタウラスはともかく、本来ならばこれほどの書類を捌く必要もない。
しかし、ピーターは時の皇帝・アガタの双子の弟にして、皇帝に次ぐ地位である副帝。
故に、皇帝業務の半分…いや、内政に限定すれば、8割程度を担当している。

アガタが秘書官などを持っていないことから、こうした事務仕事は問答無用でピーターに回ってきた。
そして、もちろん自分にも秘書官のいないピーターを見かねて、親友のロナルドと皇帝姉弟の相談役・タウラスが助け船を出したのだ。

ちなみに、当の皇帝アガタは、南バレンヌへ行幸中。
皇帝不在時の代理官でもあるピーターの仕事は、増えるばかりであった。

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