Eternal Lovers

※※※

…と、そんな昔話を、今更引っ張り出すとは思いもしなかった。


「なんとも、伯父さんらしいですねぇ…」

「らしすぎて、なんとも言えないわ。まったく」

昼下がりのティータイム。
ダイニングのテーブルで、入れたばかりの紅茶をかき混ぜながら、2人の姪が揃って口にしたのは、そんな言葉だった。

メアリーの長女・ヴィルヘルミナと、次女のルチル。
そろそろ年頃になった2人が、「伯父さんのプロポーズって、どんなだったの?」と聞くので、ことのあらましを語ったまでだ。


「プロポーズが『家を買おうと思います』って、そんなの聞いたことないんだけど…」

「あらミンナ、あの男の言うことに、何を期待したの?浪漫もなにもあるわけ無いじゃない」

「シャーリー伯母さん、容赦ないですぅ…。でも、よく考えればその通りですねぇ」


そうおっとりと微笑んで、ルチルはお茶のお代わりを注ぐ。

結局、あたしの宣言通り、メアリーは未だにあたしたちと一緒に暮らしてくれている。
旦那のジェイスンも、3人の子どもたちも一緒に。

結婚という選択肢を棄てたあたしが、まさかこんな家庭を持つなんて。
そう思うと、その鎹になってくれたライには、とても感謝してる。

家族はみんな大切だけど、今なら彼を一番にしていい…そう思っても、絶対口になんてしてあげないけど。


思えば、突然の「家を買おうと思います」宣言から、四半世紀以上。
なんだかんだで、あたしはずっと彼と一緒にいるわけで。


「でも、やっぱり伯父さんと伯母さんは、理想のカップルですねぇ。私たちの両親も仲良いですけど、伯母さんたちは目に見えて仲良しですぅ」

「そうよね。あたしも結婚とかする気ないけど、伯父さんと伯母さんみたいな関係ならやってっても良いかなって思うし」

「別に、結婚が悪いってわけじゃないわよ。正式に結婚しなかったのは、あたしの我が儘なんだから。
実際、世間から色々言われたわよ。あたしたちの関係は」


術士の関係者とか、そういう人たちはともかく。
大して縁もないのに、あたしたちのことを勘ぐってくる人間は色々いた。

一応、皇帝の直属部隊員は、それなりに有名人だから。

「そういう人たちには、なんて言ってたの?」

「別に。ライは、適当なこと言ってたわ。『恋人同士ですよ。これまでもこれからも』とかね」

「わぁ、そっちの方がずっと告白っぽいですぅ!!」


そう、ルチルはパチパチ手を叩く。それには、ミンナも「確かに」と頷いた。

言われてみれば…確かに。

つまるところ、あの男は全ての台詞を同じ調子で言うから、そこにまるで緊張感というものが生まれないのだ。
いかに重要な台詞でも、サラリと吐いてしまうから。


…まぁ、一々もったいぶって形式張られたら、きっとあたしのテンションが保たないけど。


「そんなわけだから、あたしたちのことは今後の人生であんまり参考にしないように。
あんな天然気障な男、他に居るわけないから」

「天然気障、ですかぁ…。それって、褒め言葉ですか?」

「違うわ、ルチル。伯母さん的には、それ惚気よ」

「あぁ、なるほどぉ」

「…もう、勝手に納得しないでちょうだい」


【END】

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