Eternal Lovers


「とにかく、そういう手紙が兄から送られてきたのが、昨日なんですが…今日になってから、急にこんな話が舞い込んできまして」


…また要約すると、「家を買わないか」と打診されたんだそうだ。

長く宮廷魔術士を務め、引退後も研究員として何かと手を貸してくれていた術士の先輩のお子さんが、ミラマーで開拓者をしており、「こちらでの新生活が落ち着き家も持ったので、一緒に暮らさないか」という手紙を、ご両親の元へ寄越したのだという。
先輩術士は、代々術士を出してきた、それなりに名門の家柄ではあったが、お子さんは術士を継ぐ気もなく、老夫婦は2人で長いことアバロン市内の家で暮らしているとか。

悩んだものの、さすがに歳も歳だし、術士も引退したことだからとご夫婦でミラマーに移ることにしたのだという。

…で、ご夫婦が元々住んでいた、それなりに大きい家の処分に困ったのだ。

別荘地として残すにも、いかんせん大きいので維持費がバカにならないし、代々術士をしていた家であることから、とてもミラマーへは持って行けない貴重な魔術書なども書庫に眠っているという。

誰かもらってくれる人…できれば術士が良い、と考えた時に、良い具合に未だに下宿暮らしの若手術士が居た、というわけだ。


「お世話になった、恩師と言って良い方の頼みですので、無碍に断れませんし…それに、昨日実家から手紙が来て、このタイミングです。
これは、神の思し召しかも知れないと思いまして」

「なるほど…確かに、そう考えたくもなるタイミングね」


曰く、その後の管理のことも考えると、何かと物いりなこともあり、家の規模から考えれば破格の額で譲ってくれるという。
少なくとも、今のライの収入なら、そこへ移っても充分やっていける程度の額なのだろう。


「そんなわけですから、お受けすることにはしたんですけど…。
先生と奥様は、もう来週にはミラマーに立たれるそうで。こちらも早急に荷物をまとめたいんです」

「なるほど。で、あたしにも手伝えってわけね」

なんのことかと思ったら。魔術書やら哲学書やら…とにかく書籍の類でなければ、荷物の梱包と運び出しくらい、大した手間ではない。
別に良いわよ、いつでも…そう言おうとしたら、ライは「いえ、そうではなくて」とライは首を振る。

「なによ、あなたが別に要らないって言っても、メアリーには必要でしょ?女の子の引っ越しは、色々と大変なのよ」

「でしょうね。ですからシャーリー、とりあえずはご自分の荷物をまとめて下さい。
運び出しは、こちらが終わったらすぐ手伝いに行きますから」

「そう。まあ、確かにあたしの方がメアリーより持ち物は多いけど…って、はぁ?!」

…なんか、話がおかしくない?
思わず、おかしな声が出てしまった。その反応がおかしかったらしく、ライは「珍しいですね、貴女がそんなに驚くなんて」とクスクス笑っている。

「誰のせいよ、誰の!というか、なんであたしまで引っ越すことになってるのよ!!」

「ですから、大きい家なんです。メアリーと2人で住んでも、とても管理しきれないくらい。
でしたら、こうしてほぼ一緒にいるんですから、一緒に住んだ方が経済的じゃないですか。外へ行かなくても、一緒に食事ができますし」

いや、確かにそうだけど。お互いに別の仕事をしてる間以外は、メアリーも含めて大抵一緒にいるけど。(ちなみに、今はメアリーは猟兵隊の飲み会だかで別の店にいる。)

だからって、いくらなんでも…。
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