翠玉の屈折角
「ねぇライ、あたしのこと、好き?」
「えぇ、好きですよ。とても」
「なら良いじゃない。それが、イジメ甲斐があるから好きでも、抱き心地が良いから好きでも、あたしは構わないわ。
今、好きって即答した貴方を信じてあげる。いくらでも縋りなさい。受け止められないほど、あたしは脆い女じゃないわよ」
サラサラと、あたしの指の合間から、金色の髪が滑り落ちる。
彼はその手を掴むと、あたしの目を見ながら微笑んで、甲にそっと口づけた。
「…言ったからには、逃げないで下さいね」
真剣な目で、そう一言。
嫌な予感がしたのと、指先をくわえて嘗められたのが、ほぼ同時だった。
急すぎる感触に、頭の中が真っ白になる。
「えっ、いっ、いやちょっと待っ…」
「あぁ、言い忘れてました。
先ほど、貴女の切なげな表情が好きだと言いましたが、そういうテンパった声もたまらなく好きなんです。
もっと聞きたいので、遠慮なく感じて、鳴いて下さい。
実を言うと、今あまり目がよく見えていないものですから、その方が嬉しいです」
知るもんですか、そんな事情!!
そう叫びたかったけど、今度は耳朶を甘噛みされた。
結果、恥ずかしい悲鳴ばかりが、口から零れ出る。
…まったく、完全に向こうの思う壺だわ。
眼鏡を外した彼。
受け止めることはできても、受け入れるにはまだ当分、時間がかかりそう…ね。
《END》