翠玉の屈折角
「でも、元はといえば貴女が悪いんですよ?貴女が、あまりにも…“可愛い”から」
「かっ、可愛い?!」
なにそれ。予想外の単語に、思わず声が裏返っちゃったじゃない。
あたしは、確かに容姿にはそれなりの自信がある。
でも、「美人」とか「綺麗」とかは言われても、「可愛い」とか…。
「可愛いですよ。自覚はないでしょうけどね」
あたしの心の内を読んだのか、彼は耳元でそう囁いた。
ちょっ、ちょっと!!耳元で息吹きかけないでよ!くすぐったいでしょ!!
そう訴えたいのに、まるで言葉というものを失ってしまったかのように、あたしの口からは何も訴えることができなかった。
そのまま、あっさりと位置が入れ替わって、あたしは仰向けにベッドに押しつけられた。
…あぁ、きっとあたしは今、ヒドい顔をしてる。
目を合わせたくないのに、この深い緑色の瞳は、それを許してくれなかった。
「言っておきますけど…わたしは、誰にでもこんなことをする男ではありませんからね。
貴女は、“特別”なんです」
「特別…?」
「そうです。…なんというか、適切な言葉が浮かばないので、語弊があるかもしれませんが。
貴女のその、なんとも切なげな、息も詰まりそうな表情が、たまらなく可愛いんですよ。だから、ちょっと意地悪してみたくなる…とでも言いますか」
な、なによそれ!!
そこに抗議しようと、口を開きかけたところで…唇を塞がれた。