古びたオルガンの見る夢の


 2人が講堂を出て行ったのを見計らい、アデルはその場に膝を着くと、装飾の施された正面の板に手をかける。
「えっ、それ外れるの?!」
 兄の隣にピッタリと張り付き、テオは興味深くそれを覗き見る。
 中にはずらりと、金属の筒が並んでいた。
「これがパイプ。ここに空気を流すと、音が鳴る。この並んでる列がストップって言って、それぞれ太い音だったり細い音だったり、音の質が違うんだ。
 このレバーで、どの列のパイプを鳴らすのかを操作して、鍵盤で演奏するのが、オルガンって楽器。それは、大きいオルガンでもポジティブオルガンでも同じだ」
「なるほど。ピアノみたいに、鍵盤で叩いて鳴らしてるわけじゃないんだ。てか、兄貴はなんでそんなこと知ってるのさ」
「……お前、僕が留学中に、何の研究をしてたと思ってるんだ」
「え、言霊でしょ?」
「そう。もっと言えば、『精霊が何に反応するか』っていう研究。言霊には『音』の要素も含まれるから、必然的に音の研究もしなきゃいけないんだよ。その過程で、何だかんだ楽器には触る機会があったってこと」
 なるほどー、と関心する弟を横目に、アデルはパイプを1本1本見ていく。
「……で、兄貴的にはどうなの?これ、精霊がらみの事件だと思う?」
「今、それを調べてるんだろうが」
「てか、今やってるの答え合わせでしょ?話聞いてる間から、なんか分かった風だったじゃん」
「確証はない。だから、それを探してるところで……」
 言いかけたところで、アデルの手が止まった。
 手袋越しに、その指先が何かを探り当てる。引き上げれば、それは小指の先ほどの大きさの、穴の空いた丸い金属だった。
「……なに?それ。それが確証?」
「いや、分からない」
 オルガンのパーツとして、こういったものが組み込まれているのを、少なくともアデルは見たことが無い。
 それに、正式なパーツであるならば、手で探ったくらいで取れるような造りにはなっていないだろう。
 兄弟が首をひねっていると、ギィ、とドアが開く音がした。

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