古びたオルガンの見る夢の


 学長の話はこうだ。
 5日ほど前から、学生たちの間で「講堂からオルガンの音と、女性の歌声が聞こえる」と噂になっていた。
 もちろん、学内にいるのは12歳から18歳ほどの若い女性、少女たちである。
 箸が転がってもおかしいコミュニティの噂話など、数日で忘れられるだろうと、大人たちは思っていた。
 しかし3日前の、日が沈んだ夕方5時頃。
 「本当にオルガンと人の声が聞こえる」と、数人の少女たちが、職員室に駆け込んできた。
 半信半疑で、学長含む数名の職員が駆けつけると、確かにそれらしきものが聞こえた。
 まさか不審者か、と警戒し、学長が講堂の扉を開けようとすると、鍵はかけていないはずなのに、何故か開かない。
 手の空いていた先生たちを集め、数名の大人で力任せに押すと――急にドアが開き、そこには誰もいなかったという。
 そして、その騒動に集まってきた少女たちの中で、「幽霊の仕業に違いないわ!!」という声が、瞬く間に広がり、現在に至る。

「その日の夜、学園長にお目にかかる機会がありまして、事の次第をご説明申し上げたところ、『対応できる人間に心当たりがある』と仰有っていただきまして……」
「それで、研究所に依頼が。さすが、トーアバルト伯は、行動の早い方でいらっしゃる」
 グスタフが頷き、テオが「兄貴も、名が売れたもんだね」と、うんうんと首を振った。
 しかし、アデルの目は真っ直ぐと、その問題のオルガンを見つめていた。
「学長、少しこのオルガンを調べさせていただいても宜しいですか?」
「もちろんです。是非、宜しくお願いします」
「では、お預かりします。……グスタフ、あとは任せた」
「わかりました。学長、事務的なお話をさせていただきたいので、どこか別の場所でお話できますでしょうか?」
「あぁ、はい。では、学長室へ」
 学長はアデルに向かって、再び深々と頭を下げる。
 アデルも軽く礼を返し、テオは慌ててそれに倣った。

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