古びたオルガンの見る夢の


 ※ ※ ※

「うそ、見て見て!!どこのどなた?!すっごく素敵な人!!」
「なんて綺麗な金髪なの?!それに、脚が長くて背も高い!!」
「絶対に高貴なお方でしょう?シュッとしたお顔立ちが美しすぎるわ!!」
 ――おおまかに、アデルが聞き取れた単語は、そんな感じである。
 『黄色い声』というのはもちろん比喩なのだが、四方八方から飛び交う若い女性の声が集まると、本当に黄色いと感じるのは何故なのだろう。
 ……そんなことを他人事のように思いつつ、アデルはため息を吐いた。
 これだから、直接来たくなかったのに……そう言いたいのを堪えていると、隣を歩く彼の秘書・グスタフが、「女学校とは、こういうものなのですね」と苦笑する。
 当たり前だが、アデルも、グスタフも、先頭でキョロキョロしているテオも、本来なら通うどころか、立ち入る許可すらない場所である。
 原則男子禁制、職員も教師も大半が女性のこの場所に、見ず知らずの男性が入ってくる機会など、そうそうあるわけがない。
 そんな珍しいことがあれば、まあ……と、事情は察するが。
「さっすが兄貴。『世界一のモテ男』の異名は伊達じゃないねー」
 石畳で軽やかにターンし、テオはニヤリと笑った。
「やめろ。その後ろに括弧書きで、『(ただし精霊に限る)』って付くんだ、それは」
「人間の魂だって、精霊の一種だって、兄貴いっつも言ってるじゃん。つまり、人間にも精霊にも悪霊にもモテるってことだよなー」
「テオ、そのくらいにしておいて下さい。これ以上所長の眉間の皺が深くなったら、『せっかくの美貌に傷がつく』と、わたしが世の女性に咎められますよ」
「……お前たち、後で覚えておけ」
 端整な顔立ちの眉間を、黒革の手袋の指先で押さえ、アデルは頭痛を逃がすのだった。

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