古びたオルガンの見る夢の
「……というわけだ。また学内に余計な噂が広まるといけないから、学長には詳しく話さなかったが、トーアバルト伯には書面で事情を伝えるつもりでいる」
「なるほど。噂もただの噂では無く、一部真実だった、というわけですね。
それにしても、あんな小さな校章のパーツ1つで、誰がオルガンを修理していたかまで当てたとは。所長の推理力は、わたしなどよりずっと上をいってますよ」
「あぁ、それは……」
何かを言いかけて、アデルは口を閉じた。
そして、どこか気まずそうに視線を逸らす。
「どうしたんですか?」
「いや、その……この話、テオには言うなよ。もうひとつ、材料があったんだ」
「材料?真相を導き出すまでのですか?」
「あぁ。オルガンを開けてる間、何度か向こうに視線を向けたら、3人の学生のうち、2人とは何度か目が合ったんだ。でも、彼女だけはこちらに視線を向けていても、目線は僕とは合わなかった。それが少し妙だと思って。
その後、昨日から髪を下ろしてるって会話をしていて、合点がいったんだ。このパーツは彼女の落とし物で、彼女は僕じゃなくて、オルガンのことを気にしていたんだと。付け襟の校章の位置を隠すために、髪型を変えたんだろう、とね」
それは、つまり。
「所長はモテるのが当たり前だから、自分を見ない女の子を妙だと思った、ってことですよね」
「言うな。いいか、くれぐれもテオの耳には入れるなよ」
弟を起こさないように、小声で語気を強く、若干顔を赤らめながら口にする。
「世界一のモテ男」と称される、年下の上司のその姿に、グスタフは「わかってます」と言いつつも、笑いをこらえられなかったのだった。
【終】
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