「Glory」


ーーーーそして訪れた出棺の時。


ウィーゼルが先に立ち、フェルナンドの元部下達が棺を持ち上げて彼女に続く。

屋外に用意された古びた馬車に乗せ、そのまま墓地に向かうのだ。

その他参列した人々も波のように動きながら、フェルナンドの棺に続いた。







―――――ドン、ドン、ドン、ドドン・・・・・




「あれは・・・・・・」




屋外から聞こえてきた聞き覚えのある太鼓の音にウィーゼルは一瞬足を止める。

ここまで彼女の傍らで随従していた勅使が彼女の疑問に答えた。




「慣例に従い、帝国元帥に対する格式をもってお送りせよ・・・・これも皇帝陛下のご命令です」



その言葉に対しウィーゼルは無言のまま傍らの勅使に対し深々と頭を下げた。





こうして邸宅から運び出された棺桶が既に用意されていた古びた、いや一介の平民には相応の馬車に乗せられた。

墓地へと延びる沿道には参列した多くの人々の、馬車を見守る様々な表情がある。


ここで旧部下達の手で棺桶の蓋が開かれ、
沿道の参列者の視界に花々に包まれ胸元には2つの勲章、そして右手に元帥杖を握るフェルナンドの姿が飛び込んできた。




「フェルナンド元帥閣下に対し、敬礼!!!!」




ーーーーザッッ・・・・




列の最右翼に立つ指揮官の軍刀が振り降ろされた瞬間、
沿道に整列した儀仗大隊が一糸乱れぬ見事な動きを見せて槍を掲げ、
頭を下げるウィーゼルとフェルナンドに対し最敬礼を行う。

兵士達の銀の輝きは瞳を潤ませていたウィーゼルには、どこか歪みぼやけた残像として映った。



かつて共同墓地の慰霊祭において繰り広げられた情景がここに再現されたのである。


ウィーゼル自身は知らなかったが、
それは父フェルナンド自身が幼い時に目の当たりにした“鮮烈な記憶”であり、
フェルナンド自身が一時は望み、そしてその望みを親友の為に果たした”夢の再現“でもあったのだ。











ーーーーこの葬儀の1年半後、ウィーゼルは皇帝ポールの求婚を受け入れ皇后に冊立されることになる。


後年ウィーゼルは人生最良の瞬間を問われた際、自身の結婚や皇子出産の時ではなく、
“父の葬儀”をその場面として挙げているーーー






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