「Glory」
ウィーゼル自身が頭の中の整理を終え言葉を発するより先に静寂を破ったのは、聞き覚えのある父の部下からの叫びだった。
「お嬢様、どうぞ・・・どうぞ、お受けください!!・・・・閣下の名誉こそ我等が栄光!!!」
その言葉が発端となり、会場のあちらこちらから次々と同じ言葉が発せられた。
「閣下の名誉こそ、我等が栄光!!」
「閣下の名誉こそ、我等が栄光!!」
―――――ワァァァア・・・・・・
先程とは一転して周囲が喧騒に覆われる中、ウィーゼルの脳裏に生前の父親の姿と言葉が甦ってくる。
『皆の名誉こそ、我が栄光・・・・皆こそ真に英雄の名に値する』
部下や遺族達に対して口癖のように言っていた言葉がウィーゼルの耳の奥で木霊する。
はっとした時、ウィーゼルの傍らに葬儀に参列していたスネイルの未亡人が片膝をついて寄り添っていた。
「夫に成り代わり、私からもお願い致します・・・・」
穏やかな表情で訴えかけてくる未亡人に、
ウィーゼル自身も心中期するものがあった。
たとえ亡き父親の言葉に反するとしても、
父親の名誉回復は自分自身がこれまで念願していたものーーーー
意を決したウィーゼルは頭を上げて正面の勅使と改めて向かい合う。
「・・・・・・勅命謹んでお受け致します。
陛下のご厚情、そしてこの場にいらっしゃる皆々様はじめ父に関わる全ての方々に対し、亡き父に成り代わり厚く、厚く御礼申し上げます」
勅使の傍らに立つ近衛兵から元帥杖と2個の勲章の置かれたクッションを両手で押しいただきながら、ウィーゼルは深々と頭を下げる。
頭を下げる彼女の耳に、津波のような歓声と呻き声が押し寄せてくる。
「フェルナンド元帥、万歳!!!」
「司令官閣下、万歳!!!」
「俺達の念願ここにかなったぁ!!」
―――――オオオオォォォ・・・・・・・
辺りに轟く人々のどよめきを背に受けながら、ウィーゼルは授与されたばかりの元帥杖と勲章を手に父の棺に歩み寄る。
花に囲まれて穏やかな表情の父の右手に元帥杖を握らせ、2つの勲章を彼の胸元に取り付けた。
(・・・・・・・)
晴れて帝国元帥となった父の姿に感慨深い笑みを浮かべたウィーゼルは踵を返し、
再び勅使に向き直り深々と頭を下げた。
「なお新元帥誕生に伴い、元帥列伝及び帝国英雄伝において、スネイル元帥に続く形で、フェルナンド元帥の生涯と業績が追録されることもこの場でご報告させていただきます」
勅使の言葉に会場内外の熱気は最高潮に達したーーーー